JAXA 共通技術文書ライブラリ
JAXA 共通技術文書ライブラリ
JERG-2-320A NOTICE-1 構造設計標準
Title

宇宙機設計標準:構造設計標準

Keyword

人工衛星、探査機、構造、設計標準、設計要求、荷重条件、安全係数、材料、構造解析、柔結合解析、ノッチング、開発試験、検証試験、機械的インタフェース

Scope

本構造設計標準は、JAXAが開発する人工衛星、探査機等の宇宙機の設計、解析、製作、検査および試験において適用すべき、構造に関する基本的な要求事項を示したものである。

本構造設計標準は以下の(1)および(2)の設計基準書類をベースラインとし、JAXAの宇宙機開発プログラムにおいて得られた経験・知見、最新の技術情報、国際技術標準等の動向を踏まえて最新化しつつ、再構成・統合を図ったものである。

(1)JERG-2-005  人工衛星機械設計基準(2002)
   (旧NDC-2-2-A)
(2)JERG-2-018  科学衛星搭載機器の機械設計基準書(2004)

上記(1)では「衛星システム機械設計と主構体の設計」に適用する基準と「衛星搭載サブシステム及びコンポーネントの機械設計」に適用する基準を分けた構成としていたが、基本的な要求事項が共通であることと、国際技術標準等との対応を考慮し、本構造設計標準では分けない構成とした。

本構造設計標準は、「宇宙機(人工衛星・探査機)設計標準整備計画書」(CAA-106012)に基づき策定され、構造設計標準の整備に係るワーキンググループ(WG16)、機械系分科会、推進委員会により審議されたものである。

なお、本構造設計標準が制定された後、上記(1)および(2)の設計基準書類は使用する全てのプロジェクトが終了した段階で廃止される。

Attachments
JERG-2-320A NOTICE-1 構造設計標準【本文】

1.1 適用範囲

本文書は、人工衛星、探査機等の宇宙機(以下、「衛星」と称す)(注1)の設計、解析、製作、検査および試験において適用すべき、構造に関する基本的な要求事項を示したものである。

本文書は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発する衛星のシステム、構体(主構体、二次構体)、サブシステムおよび搭載機器(注2)の設計、解析、製作、検査および試験に適用する。

なお、使い捨てロケット等の打上げ機、再使用型宇宙機、有人宇宙機は本文書の対象外とする。

(注1)本文書では、読み易さを優先して「衛星」と称するが、「宇宙機」と読み替えてよい。なお、3.1項のみ「宇宙機」を使用。

(注2) 本文書では、衛星の構造を以下のように区分しており、これらの他に搭載機器があるものと扱う。パネルが主構体となるか二次構体となるかは、構体の構造様式に依存する。

1.2 テーラリング

本文書を適用する場合、個々の衛星に対する要求事項(ミッション要求、機能・性能要求、運用条件、コスト要求、開発方式、国際共同ミッション由来の要求等)との適合性・優先度を考慮して本文書の規定に対する適用/非適用を明らかし、適切な内容にテーラリングした上で個別の仕様書等に規定すること。

下記文書の最新版は、本文書に示す範囲において、本文書の一部とする。適用時には当該文書の最新版を用いること。
本文書と下記文書の内容に矛盾がある場合には、JAXA衛星プロジェクトと協議すること。ただし、「宇宙用高圧ガス機器技術基準」は本文書より優先する。

2.1 宇宙航空研究開発機構(JAXA)文書
(1) JERG-0-001 宇宙用高圧ガス機器技術基準
(2) JERG-2-002(暫定版) 衛星一般試験標準
(3) JERG-2-130-HB003  振動試験ハンドブック
(4) JERG-2-130-HB002 音響試験ハンドブック
(5) JERG-2-021 衝撃試験ハンドブック
(6) JERG-2-310 熱制御系設計標準
(7) JERG-2-311 MLI 剥離防止設計標準
(8) JERG-2-152  擾乱管理標準
(9) JMR-010 コンタミネーション管理標準

2.2 海外の規格等
(1) MMPDS  Metallic Materials Properties Development and Standardization (注)
(2) MIL-HDBK-17  Composite Materials Handbook
(3) Aerospace Structural Metal Handbook
(4) ISO-14644-1 Cleanrooms and associated controlled environments
Part 1: Classification of air cleanliness

(注) MIL-HDBK-5 Metallic Materials and Elements for Aerospace Vehicle Structures の後継文書。

3.用語の定義および略語

3.1 用語の定義
用語の定義を以下に記す。用語の索引はAppendix.Cに示す。

<宇宙機、ミッション、運用>

(1)宇宙機  Spacecraft
本文書では無人の人工衛星および宇宙探査機の総称をいう。

(2)人工衛星  Artificial Satellite
地球の大気圏外の軌道を公転させ、所要のミッションを果たすようにした人工の飛行体。

(3)宇宙探査機、探査機  Space Probe
宇宙における観測または測定を目的とした宇宙機。

(4)ミッション  Mission
宇宙機を打上げる目的をいう。

(5)ミッション要求  Mission Requirement
宇宙機を打上げる目的(ミッション)を達成するために充足されるべき基本的要求事項。宇宙機に対しては軌道上での機能・性能要求など、打上げ機に対しては宇宙機を軌道に投入する際に達成すべき軌道や姿勢などの要求からなる。

(6)ミッション機器  Mission Equipment
宇宙機が果たすべき目的を達成するために搭載される機器。

(7)バス機器  Bus Equipment
ミッション機器を除いた、宇宙機本体の共通機器。

(8)(宇宙機の)運用  Operation
特にことわらない場合、宇宙機の打上げから軌道上でのミッション終了後の停止操作までの運用をいい、初期運用と定常運用が含まれる。

(9)使用期間 Lifetime
対象となる品目(部品、組立、コンポーネント、サブシステム等)の製造開始から、それらが組み込まれた宇宙機の組立、地上試験、打上げおよび軌道上での運用終了までの期間をいう。
(サービスライフ(Service Life)、ライフサイクル(Life Cycle)という場合もある。)

(10)要求寿命  Required Life
宇宙機の場合、そのミッションを有効に果たすべき期間で、仕様書等で規定される。
個々の部品、コンポーネント等の場合、その機能を果たすべき期間や作動回数等で、仕様書等で規定される。

<システム、サブシステム、コンポーネント、構造体>

(11)システム  System
規定されたミッションを達成するためのハードウェアおよびソフトウェアの集合体をいう。

(12)サブシステム  Subsystem
一般的には、サブシステムはシステムを構成する要素であって、規定された機能・性能を発揮できるハードウェアおよびソフトウェアの集合体をいう。
ハードウェアとしては、一つまたはそれ以上のコンポーネントを組立てたものであって、それらを取付けている支持構体および相互を接続するケーブルまたは配管を含んだもの。サブシステムは規定された機能を実現するため、機能的に関連のあるコンポーネント・部品から構成される。
代表的な宇宙機のサブシステムは電力系、姿勢制御系、テレメトリ・コマンド系、構造系、熱制御系および推進系である。

(13)コンポーネント  Component
いくつかの部品、デバイスおよび筐体を組み合わせたもので、サブシステムまたはシステムの一部を構成し、サブシステムまたはシステムの運用の中で独立した機能を遂行するもの。例えば、アクチュエータ、バッテリ、送信機、受信機などの他、電力分配器、冷凍ポンプなど。

(14)機器(搭載機器)  Equipment、Unit
本文書ではコンポーネントと同義語として使う。

(15)組立(アセンブリ)  Assembly
2個またはそれ以上の部品、デバイス、コンポーネントを組み合わせたもの。

(16)デバイス  Device
数個の部品と筐体を組み合わせたもので、コンポーネントまたはサブシステムの中である特定の機能を遂行するもの。一般にコンポーネントより複雑でないもの。
デバイスは多くの場合分解可能である。
デバイスの例としては、リレー、小型モータ、ジャイロ、電池など。

(17)部品  Part
1個または2つ以上の個片が結合されたもの。通常、破壊しなければ分解することができないものをいう。(分解した場合、設計上の使用目的は失われる。)

(18)材料  Material
部品、デバイス、その他の素材となるべき金属、非金属材料。
なお、それ自体がある特定の機能を有する補助的材料(接着剤、塗料、潤滑油など)もある。

(19)アイテム(品目)  Item
システム、サブシステム、機器、構成品、部品、要素などの総称またはそのいずれか。

(20)構造(構造体、構体、構造物)  Structure
荷重または圧力に耐え、剛性および安定性に関する要求を満たし、他のコンポーネント等を支持または収容する機能を有するものとして設計されたハードウェア。

(21)構造組立  Structural Assembly
荷重または圧力に耐え、剛性および安定性に関する要求を満たし、他のコンポーネント等を支持または収容能力を有するものとして設計された全ての組立品。

(22)主構体(一次構造)  Primary Structure
宇宙機に負荷される主要な荷重(打上げ時の荷重)を伝達するとともに、宇宙機全体の形状を保持する(剛性を確保する)役割を有する構造。また、宇宙機の最低次固有振動数を決める構造。

(23)二次構体(二次構造) Secondary Structure
主構体に取付けられている構造。主要な荷重の伝達ならびに宇宙機全体の剛性および動的挙動への寄与は殆どない。アンテナや太陽電池パドル、機器取付けブラケット等がこれに該当する。

<打上げ時および軌道上環境>

(24)ポゴ  POGO
液体ロケットの機体と推進薬供給系の振動が連成して起きる自励振動。機体や推進薬タンクの振動により、推進薬供給パイプや噴射器内の圧力が変動し、これにより推力が変動するために機体は再び励振される。

(25)バーンアウト  Burnout
ロケットがその推進薬を燃やし尽くすこと。主に固体推進薬で使用される用語。

(26)スロッシング  Sloshing
推進薬タンク内で起きる液体推進薬の動揺。

(27)食  Eclipse
太陽と宇宙機の間に、地球、月またはその他の宇宙機が入って太陽からの受光が一時的に遮られる現象。

(28)アルベド  Albedo
太陽から入射する光が天体の表面で反射されたもの。

(29)宇宙線  Cosmic Ray
星間空間から地球に飛んでくる高エネルギー荷電粒子(陽子、α粒子、電子、陽電子、原子核など)。

(30)コンタミネーション(汚染)  Contamination
宇宙機が地上環境における塵や粒子、宇宙におけるアウトガス、プルーム、宇宙塵などによって汚染される現象をいう。

<荷重条件、強度要求>

(31)静的荷重  Static Load
構造体に作用する大きさと方向が一定の荷重、または時間的に変動するがその変化率および構造体の動的応答がそれ程大きくない荷重。後者は準静的荷重(quasi-static load)ともいう。

(32)熱応力  Thermal Stress
温度勾配、温度変化によって生じるはずの物体の自由な熱膨張や収縮が、外部からの拘束または物体内の熱膨張差のある物質相互間の牽制によって拘束されることで生じる応力。

(33)残留応力  Residual Stress
外からの負荷や温度が元の値に戻った状態において、物体内に残留する応力。金属材料の場合、熱処理・塑性加工・鋳造・鍛造・切削加工などにより、物体内に不均一な塑性変形が生じることにより起こる。オートクレーブ成形した複合材の内部にも熱膨張率の差によって残留熱応力が発生する。

(34)標定荷重
種々の荷重条件のうち、部材寸法の決定に直接結びつく荷重。

(35)最大予想使用圧力  Maximum Expected Operating Pressure(MEOP)
運用環境中で、高圧ガス機器に負荷されると予想される最大圧力。

(36)最大予測荷重(最大予想荷重)  Maximum Expected Load
使用期間中、対象に負荷されると予測される最大荷重(複合荷重または荷重)。使用期間中の荷重はランダムに変動する部分があるので、最大予測荷重の設定にあたっては変動を適切に考慮する必要がある。

(37)制限荷重  Limit Load
打上げおよび軌道上での運用終了までにおいて対象物が遭遇する最大予測荷重をいい、必要に応じて地上における製作、試験、輸送、保管時の荷重を含める。なお、最大予測荷重に相当する荷重として、打上げおよび軌道上において対象物が遭遇する荷重に開発上のマージンを考慮して設定される場合もある。

(38)安全係数  Factor of Safety
合理的な方法では計算できないような設計の不確実性を考慮して、制限荷重または最大使用圧力に対して乗ずる倍数。
(安全率(Safety Factor)、設計係数(Design Factor)、設計安全係数(Design Safety Factor)等と呼ぶ場合がある。)

(39)降伏荷重 Yield Load
制限荷重に降伏安全係数を乗じて定義される荷重。
降伏荷重に温度その他の付随する環境が同時に作用する条件に対して、有害な弾性変形、有害な永久歪み(注)を生じてはならない。

 (注) 金属材料に適用する。ただし、ミッションに影響を与えない局所降伏(有害な永久変形、不安定性または疲労破壊を引き起こさない局所降伏)は許容する。一般的には0.2%を超える永久歪みを生じないことが推奨される。

(40)終極荷重  Ultimate Load
制限荷重に終極安全係数を乗じて定義される荷重。
終極荷重に温度その他の付随する環境が同時に作用する条件に対して、破壊または座屈を生じてはならない。

(41)有害な変形  Detrimental Deformation
荷重および温度の負荷によって生じる弾性または非弾性変形で、構造体のある部分でその意図した機能の達成を阻害するもの。

有害な変形の例として以下が挙げられる。
・システムの機能劣化
・衛星の隣接した構造間、構造と搭載機器間、搭載機器間の接触、干渉
・搭載機器内部の隣接部品間の接触、干渉
・永久歪みの蓄積による強度低下

(42)破局的な(カタストロフィックな)故障  Catastrophic Failure
人命またはミッション、宇宙機の喪失に至る故障。

(43)終極  Ultimate 
構造体が崩壊したり、破壊したり、あるいは荷重を支えきれなくなった状態をいう。

(44)崩壊  Collapse
荷重を負荷された状態下で、構造が耐荷能力を瞬時に喪失する破損。

(45)座屈  Buckling
構造体がそれに加わる荷重の微小増加で急激に大きな非線形変形を生じる(変形モードが急激に移り変わる)現象をいう。板またはシェル等の座屈が代表的な例。

(46)クリップリング  Crippling
圧縮荷重において、板またはシェルの局部が非弾性変形を生じること。結果として構造体の耐荷能力が減少する。

<材料強度、材料特性>

(47)許容荷重(応力、歪み) Allowable Load (Stress、Strain)
規定の環境下において構造物が破壊、崩壊、または有害な変形を起こすことなく耐えられる最大の荷重(または応力、歪み)。
材料の許容応力は十分信頼性のある試験データに用いて統計的に設定する必要がある。

(48)降伏強さ(降伏強度)  Yield Strength
材料に荷重をかけた場合に、弾性変形から塑性変形への移行を開始する点(弾性限または降伏点)での応力をいう。明瞭な降伏点の現れない金属材料では0.2%耐力を使用する。

(49)耐力  Proof Stress
明瞭な降伏点の現れない金属材料では、応力-歪み線図において通常、0.2%の残留歪みを生じる応力を耐力と呼び、これを降伏強さとして使用する。

(50)終極強さ Ultimate Strength
破壊または破損することなく材料が耐えることのできる最大応力。
引張の場合、引張強度(Ultimate Tensile Strength)は材料の引張強度試験における最大荷重負荷時の公称応力をいう。

(51) A値、B値、S値 A-value、B-value、S-value
材料の機械的特性について、以下で定められた下限値。
A値: 母集団の99%が95%の信頼性水準でこの値以上となる下限値
B値: 母集団の90%が95%の信頼性水準でこの値以上となる下限値
S値: 工業界の代表的な規格、仕様書で規定された下限値。
A値、B値を直接決定するためには統計的に十分な数の試験サンプルが必要である。

(52)クリープ  Creep
金属材料を一定荷重または一定応力下で長時間使用すると、歪みが次第に大きくなる現象をクリープと呼び、特に高温の場合に著しい。

(53)ストレスラプチャ Stress Rupture
非金属構造について、持続荷重下で時間経過によりき裂が進展し、破断する現象。
持続荷重下でストレスラプチャにより破断するときの引張強度をストレスラプチャ強度という。

(54)腐食  Corrosion
材料と環境の間で起きる化学的または電気化学的反応。

(55)応力腐食割れ  Stress-Corrosion Cracking
合金が一定持続荷重下で侵食性環境の影響を受け、腐食によるピットがクラックに進展して引き起こす脆性的な破壊。

(56)電食  Galvanic Corrosion
異種金属間(あるいは活性の異なる金属間)に電流が流れる場合に発生する腐食。

(57)フレッティング腐食  Fretting Corrosion
小さな動きを伴う接触面における表面の酸化を伴う損傷、摩耗。

(58)アウトガス  Out Gas
物質が高真空および高温に曝されたとき、物質の表面および内部から水(水蒸気)、炭酸ガス、酸素、水素、窒素などの気体が放出される現象またはその放出される気体をいう。

(59)全質量損失比  Total Mass Loss (TML)
規定された温度と圧力で、規定の時間保持された供試体から放出されるガス物質の質量を、試験前の供試体質量で割った値を百分率(%)で表したもの。アウトガス特性を測定する項目の一つ。

(60)再凝縮物質量比  Collected Volatile Condensable Material (CVCM)
供試体およびコレクタを規定された温度に一定時間保持した後、コレクタ上に凝集した供試体から放出されたガス物質の質量を、供試体の初期質量で割った値を百分率(%)で表したもの。アウトガス特性を測定する項目の一つ。

(61)再吸水量比  Water Vapor Regained (WVR)
全質量損失比(TML)と再凝縮物質比(CVCM)を測定する試験後の供試体質量と、再び相対湿度50%、23℃の大気に24時間暴露した後に計測した供試体質量の差から、供試体に再吸収された水蒸気を算出し、初期質量で割った値を百分率(%)で表したもの。アウトガス特性を測定する項目の一つ。

<疲労>

(62)疲労  Fatigue
材料および構造体が荷重および環境の繰り返し作用によってき裂を生じ、強度低下を起こすこと。

(63)疲労寿命  Fatigue Life
材料および構造体にき裂または破損のいづれかを生じるまでの応力繰り返し数。または、その応力繰り返し数に達するまでの運用期間。

(64)フェイルセーフ設計  Fail Safe Design
宇宙機構造の場合、任意の一構造部材が破損しても残りの構造部材の強度または剛性によって制限荷重の範囲内でミッション遂行が可能となるようにする設計方法。

(参考:飛行機の場合、疲労き裂などの部分的な破壊が生じても、その被害は限られた狭い部分にとどまり、構造全体の致命的な破壊に進行する前にその箇所を点検によって発見し、補強あるいは部品交換などの対策を採ることを前提とする構造設計を言う。)

(65)損傷許容設計  Damage Tolerance Design
製造段階での微小な欠陥(許容値以下または検出限界以下の初期き裂、剥離等)および地上での組立、試験、整備中に受けると予想される損傷(衝撃損傷や他の機械的損傷による傷、割れ、剥離等で、許容値以下であるものまたは打上げ前に検出できないもの)に対し、修理することなく定められた期間に破壊に至らない設計方法。

(参考:飛行機の場合、製造段階での微小な欠陥(初期き裂)および運用中に受けると予想される損傷を前提として、運用中の繰り返し荷重によるき裂進展を含めてその残存強度を保証する構造設計を言う。)

(66)損傷管理  Damage Control
機械的損傷によって破壊強度が機能要求を下回るのを防止するために実施する管理。損傷予防管理と損傷許容設計の2つの手法に分けられる。

(67)損傷予防管理  Damage Prevention Control
損傷が発生しないように実施する管理。損傷予防管理計画の作成、損傷予防管理計画の遵守、損傷予防管理記録の作成からなる。

<管理要求、機械システム、電気システム>

(68)質量特性  Mass Properties
宇宙機の質量、重心位置、慣性モーメントおよび慣性乗積をいう。

(69)アライメント  Alignment
宇宙機に搭載される機器の取付角および位置。

(70)アライメント測定  Alignment Measurement
宇宙機の場合は、宇宙機の基準軸と光学センサ、アンテナ、ノズル等の取付角のなす角度およびそれらの取付位置を測定すること。

(71)電磁適合性  Electromagnetic Compatibility
システム、サブシステムおよびコンポーネントが指定されたミッションの遂行期間中に遭遇する全ての電磁環境のもとで、性能低下を起こすことなく、要求された機能を維持してミッションを達成する能力。

<開発方式、試験モデル、解析モデル>

(72)プロジェクト  Project
宇宙機を開発・運用するという目的・使命を持った作業のまとまり、あるいはその作業を行う集団をいう。

(73)開発モデル  Development Model
設計・解析・製造・試験などに関する情報の取得と確認、設計変更の評価、インタフェース適合性の確認など、プロトタイプモデルの設計および試験方法を固めるために行う試験(開発試験)に供するために製作されるモデル。
開発モデルには、電気モデル、熱モデル、構造モデル、ブレッドボードモデルなどが含まれる。(注)
(注) 電気モデル、熱モデル、構造モデルなどを総称して(広義の)エンジニアリングモデルということがある。また、電気モデルを(狭義の)エンジニアリングモデルということがある。 

(74)ブレッドボードモデル(機能試験品)  Bread Board Model (BBM)
設計初期において、クリティカルな構造や回路などについてその機能を検討するために、一般用の部品および材料を用いた簡易なモデル。
なお、質量、寸法および宇宙環境に耐える性能は要求されない。

(75)構造モデル  Structure Development Model
宇宙機の構造設計を固めるための試験(開発試験)に使用される供試体。構造的には(主構体、二次構体は)打上げ用宇宙機と同じに作られるが、搭載機器や機能部品等については、質量、重心、慣性能率を合わせたダミーが取付けられる。構造モデルは静荷重、振動、音響、衝撃などの機械環境試験に供される。

(76)熱モデル  Thermal Development Model
宇宙機の熱設計を固めるための試験(開発試験)に使用される供試体。熱的には打上げ用宇宙機と同じに作られるが、外部との熱の出入りや搭載機器の発熱量が等価であるようなダミーが用いられる。熱モデルは熱真空試験、熱平衡試験などに供される。

(77)フライトモデル  Flight Model (FM)
実際に打上げ、軌道上で運用される宇宙機システムおよびそのサブシステムまたはコンポーネント。宇宙機システムは受入試験を受けた後、打上げに供される。また、サブシステム、コンポーネントは受入試験を受けた後、宇宙機への組み込みが可能となる。

(78)プロトタイプモデル  Prototype Model (PM)
フライトモデルの設計を認定するために製造される宇宙機システムおよびそのサブシステムまたはコンポーネントであり、認定試験に供される。

(79)プロトフライトモデル  Proto-Flight Model (PFM)
前もってプロトタイプおよびフライトタイプの両用に指定されたもので、認定試験および受入試験の各要素を混合したプロトフライト試験に供されるモデル。

(80)構造解析モデル(構造数学モデル)  Structural Analytical Model
(Structural Mathematical Model)
宇宙機全体または一部の構造特性を数学的に表現したモデル。静的解析(準静的加速度応力解析)、熱ひずみ解析、固有振動数や座屈荷重を求めるための固有値解析、構造物の過渡的な応答を求めるための動的解析などに使用される。

(81)熱解析モデル(熱数学モデル)  Thermal Analytical Model (Thermal Mathematical Model)
衛星全体または一部の熱的特性の数学的表現であって、熱環境条件に対する温度予測のために用いる。
熱解析モデルは、コンポーネントの動作条件、内部加熱、衛星の姿勢・太陽輻射、日陰条件、打上げ時加熱、ミッション中の表面熱特性の劣化に係る最悪な組合せなどを考慮して作成する。熱解析モデルは通常、最悪運用モードに設定して、熱モデルを用いた熱平衡試験において検証する。

<開発試験、検証試験>

(82)試験  Test
機能、性能、特性の確認のために供試体および関連機器を電気的、物理的、機械的に作動させて確認し、データ等を取得する行為。

(83)開発試験  Development Test
開発の初期の段階で、例えばエンジニアリングモデルを用いて要求使用を満たす設計および製造方法の実現性を確立するために行われる試験。

(84)認定  Qualification
品目が適用仕様書等で定められた全ての要求事項に合致する能力があることの決定。設計、製造、検査、試験等およびそれに付随する技術文書がその対象となる。

(85)認定試験  Qualification Test (QT)
認定用の供試体であるプロトモデル(Proto Model, PM)が適切なマージンをもって仕様要求を満たしていることを認定するための試験。

(86)受入試験  Acceptance Test (AT)
フライトハードウェアとしての受入れ可能性を立証するために実施する試験。受入試験は認定済みの設計によって製造されたハードウェアに材料および製造上の欠陥がないことを確認するために行う。

(87)プロトフライト試験  Proto-Flight Test (PFT)
ハードウェアの設計および製造方法を認定し、かつ、フライト用に受け入れるための試験。

(88)プルーフ試験  Proof Test
作動状態において破損の原因となるような大きさの初期欠陥が存在しないことを保証するための試験。

(89)環境試験  Environmental Test
地上での取扱い、打上げおよび軌道上での運用において宇宙機が曝される予測環境を模擬した条件を地上で実現し、その環境下での宇宙機のサブシステム・コンポーネントなどの耐性や機能を確認するための試験。

(90)加速度試験
宇宙機およびそのコンポーネントなどが打上げ時、アポジモータの燃焼時などにおいて受ける加速度環境に耐え、その環境下において動作が正常に行われることを確認するための試験。

(91)振動試験  Vibration Test
宇宙機およびそのコンポーネントなどが打上げ、飛行、輸送、取扱いなどにおいて受ける振動環境に対して十分に耐え、その環境下で必要な動作が正常に行われることを確認するための試験。振動試験は正弦波振動試験とランダム振動試験からなる。

(92)音響試験  Acoustic Test
ロケットの打上げ時に発する音や飛行中に受ける空気層の振動音を作り出し、その環境下で宇宙機、ロケットおよびその搭載機器が正常に動作することを確認する試験。

(93)衝撃試験  Shock Test
宇宙機およびそのコンポーネントなどが受けると予想される衝撃環境に耐え、また、その環境下において誤作動が無いことを確認するための試験。落下試験機、振動試験機、火工品などで衝撃を与え、機能を確認する。

(94)爆管衝撃試験  Pyro Shock Test、Pyrotechnic Test
宇宙機/ロケット分離、太陽電池パドル展開、アンテナ展開、クーラーカバー分離などで用いられる火工品(爆管)が作動した時には、高周波を含む衝撃が発生する。環境試験の一環として、実機に用いられるものと同一の火工品を実際に作動させ、宇宙機各部での応答特性を評価する試験をいう。

(95)熱真空試験  Thermal Vacuum Test
狭義の意味の熱真空試験は、宇宙機、サブシステムまたはコンポーネントをスペースチャンバ内に入れ、真空下において軌道上で遭遇する温度環境もしくはそれより厳しい環境に曝し、これらが正常に作動し、機能・性能を満足することを実証するために行う試験である。
広義の意味での熱真空試験は熱平衡試験と上記狭義の熱真空試験の総称として用いられる。

(96)熱平衡試験  Thermal Balance Test
宇宙機における熱設計の性能すなわち熱制御システムによって宇宙機のサブシステム、コンポーネント等が規定温度内に維持されるかどうかを評価・確認するための試験。

(97)特別試験  Special Test
宇宙機の特別試験とは、開発試験・認定試験・受入試験・プロトフライト試験に記載されていないが、開発の必要から実施する試験である。個々の宇宙機に対する特別の条件から必要とされる技術資料取得のための試験であり、宇宙機の構成により必要となる試験(ハードウェアの信頼性を確認するための試験を含む)と、通常の試験において発生した一部の不具合を検討するために実施する「部分的再試験」がある。宇宙機を打上げた後に発生した不具合の原因探求のために行う試験も宇宙機の特別試験として扱われる。

(98)機能試験  Functional Test
供試体が要求通り作動することを確認するために行われる試験。

<衛星ハードウェア>

(99)圧力容器  Pressure Vessel
内部に常用の温度(設計温度)において圧力1.0 [MPa]以上の圧縮ガス、あるいは常用の温度(設計温度)において圧力0.2 [MPa]以上の液化ガスを貯蔵する容器。

(100)複合圧力容器  Composite Overwrapped Pressure Vessel (COPV)
ライナ(内層)と複合材(外層)からなる圧力容器。

(101)推進薬タンク Propellant Tank
ロケットや宇宙機の液体推進薬を貯えるための容器。 

(102)取付面および搭載面  Attach Plane and Mount Plane
機器が支持構造と接触し、固定される面を機器の「取付面」という。また、機器が固定される支持構造側の、機器との接触面を「搭載面」という。

(103)太陽電池パドル  Solar Array Paddle
太陽電池とそれを支持する構造体の総称であり、宇宙機から船の櫂状に突き出している形状からこの名称がある。

(104)展開型アンテナ  Deployable Antenna
打上げ時には折りたたんでおき、軌道上において展開することによって所期の性能を発揮するアンテナ。

(105)火工品  Pyrotechnic Device
火薬・爆薬を使用目的に応じて加工して内蔵したデバイス。

(106)サーマルインシュレーション、断熱材  Thermal Insulation
サーマルインシュレーションは、ある温度における二つの境界面間の単位面積当たりの熱流率を減少させることを目的として設計される。低熱伝導率を持ったフォームのような一枚の均質な材料または多層インシュレーションシステムから成っている。多層インシュレーションシステムにおいては、各層は輻射率の小さい輻射シールドとして働き、低熱伝導性のスペーサによって分離されている。

(107)ワイヤハーネス  Wire Harness
何本かの電線を束ねて、その両端にコネクタなどを備えたサブアセンブリ。ハーネスと略すこともある。

<信頼性管理、品質管理、他>

(108)信頼度  Reliability
「規定された運用期間において、規定の時間および規定の条件下で要求された機能を遂行する確率」として表現されるシステムまたはシステム要素の特性。

(109)インタフェース管理文書  Interface Control Document
システム、コンフィギュレーション品目間の機能的および物理的特性の両立性を確保するための条件を規定した文書。インタフェース管理仕様書、インタフェース管理図面もこれに含む。(注)

 (注) 衛星/ロケット間のインタフェース規定を定める文書は以前はインタフェース管理仕様書(Interface Control Specification)と称していたが、最近ではインタフェース管理文書(Interface Control Document)と称するのが主流である。
日本国内では衛星システムと搭載機器またはサブシステム間のインタフェース規定はインタフェース管理仕様書(Interface Control Specification)またはインタフェース管理図面(Interface Control Drawing)として定めることが多い
衛星/ロケット間や衛星システム/搭載機器間のインタフェース管理文書では荷重条件、環境条件、機械的インタフェース、電気的インタフェースなどが規定される。

(110)コンフィギュレーション  Configuration
システムまたはこれを構成する品目の機能的および物理的特性。

(111)作動寿命  Operation Life
交換または再生されるまで、アイテムがその機能・性能を規格内で維持し、ミッションを遂行できる時間または回数。

(112)有効寿命  Useful Life
ゼロ時間からオーバーホールや廃棄等の処置を要するまでの全作動時間(作動寿命限定品目の場合)または経過暦日(ストレージリミテーション品目の場合)をいう。

(113)製造  Fabrication
物品を図面通りに作り上げる行為。個々の部品の加工からそれらを組上げ、製品としての組立を終えるまでをいう。切削、加工、接着、溶接、はんだ付け、熱処理、表面処理、組立等は全て製造に含まれる。

(114)特殊工程  Special Process
通常の方法による検査のみでは、その品質を保証することが困難であり、当該製品の製造工程および検査工程(設備器材の点検、整備を含む。)またはその工程に従事する特定の作業員の技量および作業の維持管理の状況を審査することによって、品質の適合性を確認することができる工程・作業等をいう。

(115)ロット  Lot
一定の連続した時間内に材料、治工具、工程、作業者、技術指示およびコンフィギュレーションを変えることなく製造された物品。

(116)検査  Inspection
計測、試験、ゲージ合わせ、目視などの方法で物品・材料などを規定された要求と比較する工程。

(117)非破壊検査  Non-Destructive Inspection
物品を試験してもその機能・性能が変わらない検査の方法。一般に行われる検査の大部分がこれに属する。

(118)不具合  Nonconformance
一つ以上の特性が要求と合致しない物品の状態。異常(機能的に疑わしい兆候)、故障、偏差、欠陥、不足および機能不良・停止を含む。

(119)故障  Failure
物品が所定の(規格、仕様書および図面などに規定されている)機能・性能を満足しない状態。

(120)品質  Quality
ミッションを達成するために満足する必要がある機能、性能、質量をはじめとした、個々の物品等に要求された評価の対象となる固有の性質、性能の全体。

(121)品質要求  Quality Requirement
物品等が満足すべき品質の特性に関する要求事項。

(122)品質保証  Quality Assurance
製品が規定された全ての品質要求に合致することの確信を得るために行う、計画的・体系的な活動をいう。

(123)安全性、安全  Safety
要員等の支障・職業病、または施設・設備・財産の損失や損傷を引き起こす要員がないこと。


3.2 略語

AT (Acceptance Test) 受入試験
BBM (Bread Board Model) ブレッドボードモデル、機能試験品
CLA (Coupled Load Analysis) 柔結合解析
CVCM (Collected Volatile Condensable Material) 再凝縮物質量比
EM (Engineering Model) エンジニアリングモデル
EMC (Electromagnetic Compatibility) 電磁適合性
FM (Flight Model) フライトモデル、実機
MEOP (Maximum Expected Operating Pressure) 最大予想使用圧力
N/A (Not Applicable) 適用せず
PAF (Payload Attach Fitting) 衛星分離部
PFM (Proto-Flight Model) プロトフライトモデル
PFT (Proto-Flight Test) プロトフライト試験
PM (Prototype Model) プロトタイプモデル
QT (Qualification Test) 認定試験
TML (Total Mass Loss) 全質量損失比
WVR (Water Vapor Regained) 再吸水量比

以下の内容は衛星のシステム機械設計ならびに構体、サブシステムおよび搭載機器の構造設計に適用される。

4.1 一般要求
衛星設計に要求される条件は、衛星の製作開始時からミッション完了までの全使用期間内に発生するすべての事象を包含するものとする。この期間は、製作、保管、輸送ならびにハンドリング、地上試験、打上げ前、打上げ時および軌道上の段階等から構成されているが、衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器はこれらに対応する諸条件に対し所要の性能を充分維持し得るものでなければならない。

4.1.1 構造設計に関する原則
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器の設計条件は、各衛星に対するミッション要求、コスト、運用条件、要求信頼度等が相違するため、一義的に明示することは困難である。しかし基本的な構造設計の目的は、衛星がその運用期間中所定のミッションを遂行し得る総合的な機能の追求にある。構造設計に関する原則的な考えは以下の通りである。
(1) 衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器の設計条件としては打上げ時および軌道上でのクリティカルな条件を主たる設計条件とし、他の段階に特有の荷重等は、可能な限り地上側の取扱い治工具等で負担、処理できるよう考慮すること。
(2) 構造系の信頼度向上のため衛星の構体およびサブシステムは可能な限り単純化を図り、強度/剛性上の特性や荷重負荷経路等が正確に把握可能なものとなるように設計すること。
(3) コストの低減に留意しつつ、ミッション要求を満足するように衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器の設計を行うこと。
(4) サブシステムおよび搭載機器を適切な環境条件のもとに支持または収納できるように構体(主構体、二次構体)の設計を行うこと。
(5) サブシステムおよび搭載機器に要求した事項に適合するように構体(主構体、二次構体)の設計を行うこと。例えば、構体側は、インタフェースで規定した結合部のボルト引張および剪断荷重に耐えることを保証すること。
(6) 衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器の製造は標準的な製造方法または開発試験等で確立した製造方法によるものとし、設計と製造との適合性について考慮すること。
(7) 検査、インテグレーション試験や射場作業時のサブシステム・搭載機器および計装類の脱着や補修に対して、容易にアクセスできるように構体(主構体、二次構体)の設計を行うこと。
(8) 衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器は強度、剛性等の要求を満たした上でできる限り軽量となるように設計すること。

4.1.2 要求仕様の検討
衛星構造(構体、サブシステム)の設計をする上で検討すべき項目を整理し、対象となる構造に対して要求される仕様を設定すること。検討すべき代表的な項目を以下に示す。
(1) 打上げロケットとの適合性
(2) 質量
(3) 荷重条件
(4) 強度
(5) 剛性
(6) 構造(構体、サブシステム)の形状寸法
(7) 構造(構体、サブシステム)の材料(腐食性、応力腐食性、電食性のチェック等を含む)
(8) 構体と搭載機器間、構体とサブシステム間の取付インタフェース
(9) 搭載機器およびサブシステムに対する機械環境条件
(10)搭載機器およびサブシステムのアライメント要求
(11) 熱伝導性あるいは断熱性
(12) 姿勢制御系とのダイナミック・カップリング
(13) 組立性
(14) ハンドリング
(15) 輸送性
(16) 導電性
(17) コスト

4.1.3 衛星コンフィギュレーションの設定
衛星システム設計において、搭載機器およびサブシステムの配置やロケットフェアリング内の許容包絡域等を考慮して、打上げおよび軌道上における衛星のコンフィギュレーションを決定すること。この過程において、構体の寸法、構造部材の構成、配置等を決定する。
次に、強度、剛性以外の要求仕様に合致していることを確認しつつ、衛星の使用期間中に作用すると予測される荷重を包絡した荷重条件を各構造部材ごとに設定し、各構造部材の形状、寸法、使用材料等の仕様を決定する。その上で強度、剛性の要求を満足しているかを確認し、要すれば構造部材の仕様を見直すこと。


4.2 システム要求
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器に対する設計要求のうち、衛星システム側にて設定すべき事項(衛星のミッションや運用条件、打上げ手段等によって定まる設計要求)を以下に示す。

4.2.1 使用期間

4.2.1.1 使用期間(サービスライフ)
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器の設計にあたっては、製造開始から運用終了までの全使用期間を考慮して荷重条件および環境条件等の設計要求を定めること。この際、各フェーズにおける衛星の形態および質量特性の変化も考慮すること。
(1) 製作、輸送、取扱い、保管
(2) 地上試験
(3) 打上げ前
(4) 打上げ時
(5) 軌道上

4.2.1.2 イベント
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器が使用期間中に遭遇すると予測される各種のイベント(機械的および熱的な負荷が加わるイベント)を識別すること。
各イベントで予測される負荷のうち、構体、サブシステムおよび搭載機器の設計において最も厳しい負荷条件(荷重および温度の特性、負荷時間、負荷サイクル数)を明確にすること。
各イベントで遭遇する全ての環境(自然環境を含む)を考慮すること。
考慮すべき代表的なイベントの例を以下に示す。

 (1) 地上
(a) 製造(組立作業等)
(b) 輸送、ハンドリング、保管
(c) 地上試験
(d) 打上げ前整備作業(推進薬充填・加圧、ロケットとの結合作業含む)

(2)打上げ時
(a)リフトオフ時
① エンジンおよび固体ロケットブースタ点火
② 推力立ち上がり
③ 拘束解除
④ 射座離脱
⑤ 初期上昇
(b) 飛行時
① 定常飛行
② 遷・超音速飛行時
③ 動圧最大時 or 動圧×迎角最大時
④ 空力加熱最大時
⑤ 固体ロケットブースタのバーンアウト、1段エンジン推力停止
⑥ 固体ロケットブースタ分離、フェアリング分離、各段分離
⑦ 2段(上段)エンジン着火、燃焼、推力停止
⑧ 上段(固体ロケット)のスピンアップ
⑨ 衛星分離

 (3) 軌道上運用
① 太陽電池パドル展開、アンテナ展開
② プローブ、子衛星等の分離
③ 食
④ マヌーバ
⑤ ドッキング

 (4) その他
① 大気圏突入
② パラシュート展開、着地 

4.2.2 環境
使用期間中に遭遇すると予測される全ての環境下において、衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器は所要の性能を充分維持し得るものでなければならない。
使用期間中に負荷される機械環境(荷重を含む)および熱環境に加え、地上における建屋内環境(温度、湿度、清浄度等)および軌道上における環境(真空、熱放射、放射線、メテオロイドおよびデブリ)についても考慮すること。

4.2.2.1 機械環境
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器の設計にあたっては、以下の静的および動的な機械環境のうち必要なものを考慮すること。
・準静的加速度(定常加速度を含む)(注)
・過渡応答   (リフトオフ時、大気中飛行時の突風作用時、エンジンまたは固体ロケット
モータの着火時/停止時、段間分離時等の応答など。)(注)
・正弦波振動
・音響
・ランダム振動
・衝撃
・衛星周囲の圧力変化(打上げ時のベンティングによる)
同時に作用する機械環境の組合せ効果を考慮し、構造の特性に応じて要すれば荷重条件に反映すること。
(注) H-IIAなどの液体ロケットでは通常、衛星の主構体に作用する準静的加速度(またはLoad Factor)として低周波の過渡応答を含めた値で規定している。固体ロケットのM-Vでは着火時の過渡応答を準静的加速度とは別に定義していた。

4.2.2.2 熱環境
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器の設計にあたっては、以下の熱環境を考慮すること。定常状態および過渡状態における熱環境を考慮し、必要な場合は非常時運用における熱環境を考慮すること。熱環境に関する詳細はJERG-2-310熱制御系設計標準を参照のこと。

(1) 打上げ時の加熱
衛星はロケットの上昇中に、フェアリング内壁からの熱入力、フェアリング開頭後の希薄気体による空力加熱、ロケットの排気プルームおよびモータ・ケース等からの熱入力の影響を受ける。

(2) 軌道上での熱入力・熱放射
衛星は軌道上で太陽からの熱放射、地球等の天体からの熱放射(赤外放射)やアルベドによる熱入力の影響を受けるとともに、衛星自身も表面から宇宙空間へ熱を放射する。
衛星内の温度分布には以下の項目が影響を与える。
・衛星の位置と姿勢 (熱源と衛星間の相対位置関係の時間変化)
・衛星のコンフィギュレーション (アンテナ・パドル等の展開状態、駆動による形態変化)
・衛星表面の熱吸収率と熱放射率
・衛星構体内の熱伝導および構体間の熱放射
・サブシステムおよび搭載機器の発熱(推進系作動時の熱伝達含む)
・サブシステム・搭載機器/構体(または他のサブシステム・搭載機器)間の熱伝導および
熱放射

4.2.2.3 軌道上環境
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器の設計にあたっては、軌道上での高真空を考慮すること。
また、軌道上における中性原子(特に原子状酸素)および分子との衝突による材料の侵食、荷電粒子(電子、陽子、イオン、太陽放射線、銀河宇宙線)、太陽紫外線等による材料劣化を考慮すること。

4.2.2.4 メテオロイドおよびデブリ
マイクロ・メテオロイドおよび軌道上デブリによる影響については、必要な場合、遮蔽を含めて構体、サブシステムおよび搭載機器の設計時に考慮すること。(注)

(注) メテオロイド(宇宙塵)および軌道上デブリは衛星と衝突して損傷を与える可能性がある。一般に直径1mm程度以上の粒子の高速衝突は、特に衛星の脆弱点に衝突するならば、機能の喪失やミッションの喪失を招き得る。圧力容器に対しては小さな衝突でさえ破裂を招くことがある。これまでの各国の地上観測や搭載機器による観測で得られた結果より、30~500μmの範囲ではメテオロイドが、それ以外のサイズではデブリが支配的であることから、メテオロイドに関して大きな問題はないが、デブリについてはその数が年々増加しており注意が必要である。 

4.2.2.5 腐食効果
環境(湿度、洗浄後の残留物質、持続的な応力、接触面の摺動等)が構体、サブシステムおよび搭載機器の材料特性に与える効果(腐食、応力腐食、電食、水素脆性、フレッティング腐食等)を考慮すること。(注)

(注) 腐食はアルミ合金およびマグネシウム合金で発生しやすい。腐食は局所的に発生し、検知されず突然、破壊に至ることがある。局所的な腐食としては、水の存在下で異種金属間に発生する電気化学的な反応によるものが代表的である。また、材料製造プロセスでの残留物や付着水分が蒸発した後の塩分がある場合、湿度のある地上環境下で腐食が発生する。地上における環境を管理するとともに、適切な材料を選択することが必要である。

4.2.3 荷重条件
衛星が使用期間中に遭遇すると予測される荷重および環境に基づき、荷重条件および環境条件を定めること。打上げ形態を含めて衛星/ロケットの組み合わせに新規性がある場合、打上げ時の荷重や環境については早めにロケット側と調整するのが望ましい。これらの条件は、衛星システム全体、搭載機器単体、必要に応じてサブシステムに対して規定すること。(注)
(注) 通常は衛星とロケットのインタフェース管理文書、各衛星プロジェクトで制定する耐環境性設計基準書や衛星システム/搭載機器間のインタフェース管理文書等で規定する。衛星とロケットのインタフェース管理文書制定前は、ユーザーズマニュアルに基づいて検討する。

4.2.3.1 荷重
(1) 地上での取扱い時
製作、取扱い、輸送、組立および保管時の荷重については、局所的なアタッチメント部(吊り治具との結合部等)を除き、原則として構造設計において支配的な荷重とならないように治具、取扱い手順および取扱い時の保持位置(吊り上げポイントの配置等)などを工夫すること。

(2) 地上試験時
衛星の開発方式、試験条件によっては、フライト品のシステム試験および機器単体試験(あるいはサブシステム試験)において打上げ時および軌道上での最大予測荷重以上の荷重が負荷される。(注1~2)  
有害な弾性変形、有害な永久歪み(金属の場合)を生じることなく、フライト品が地上試験時で負荷される最大荷重およびそれに複合した環境条件(注3)に同時に耐えるように設計すること。試験時の荷重として試験公差を考慮すること。
なお、搭載機器単体の動的な機械環境試験条件については以下を原則とする。ただし、システム認定試験の応答が過剰とならないよう注意すること。サブシステム単体で試験を実施する場合も同様。
機器認定試験レベル ≧ システム認定試験時の応答

(注1) プロトフライト開発方式の衛星では、システム試験時に打上げ時、軌道上での最大予測環境以上の環境(認定レベルの環境)が負荷される。開発試験時に認定レベルの環境を負荷した供試体(構造モデル等)をフライトに転用する場合もある。
さらに、構造体によっては制限荷重以上の荷重でプルーフ試験を行うものがある。

(注2) 熱試験時には、軌道上と試験時コンフィギュレーションの差および実環境と試験環境の差により、打上げ時の準静的加速度や振動などの機械環境に起因して生ずる荷重ではカバーされないようなクリティカルな荷重が、機械環境に対して必ずしも標定とはならない部位で生ずる場合があるため、注意を要する。熱試験コンフィギュレーション(試験治具との間の拘束条件や相対的な変形、横倒しの有無など)や試験時に構造各部が曝される温度条件などについて、熱設計担当者と十分な調整を図ること。

(注3) 以下、本文書にて「複合した環境条件」とは、荷重だけではなく、温度等の同時に評価すべき条件のことを指す。

(3) 打上げ前
射場での整備作業中に衛星に負荷される荷重を考慮すること。衛星と衛星分離部を結合した状態で衛星を吊り上げる場合や、衛星フル装備(推進薬充填・加圧)状態で横倒し状態から起立する場合もある。

(4) 打上げ時
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器は、その大部分において打上げ時の荷重が標定となる。打上げ時の荷重を生じるイベントとしては、打上げロケットのエンジンおよびモータ点火時、動圧最大時、機軸加速度最大時、各段エンジン推力停止時、各段間接手分離時、サブブースタ分離時、ノーズフェアリング開頭時があり、さらに、突風応答やPOGO、推力制御装置駆動による機体の応答等がある。
これらのイベントで生じる荷重条件としては、以下のものが一般的に規定される。
・準静的加速度(定常加速度を含む)による荷重(注)
・過渡応答(注)
・正弦波振動に対する応答
・音響に対する応答
・ランダム振動に対する応答
・衝撃に対する応答
・ベンティング時の差圧による荷重
(注) H-IIAなどの液体ロケットでは通常、衛星の主構体に作用する準静的加速度(またはLoad Factor)として低周波の過渡応答を含めた値で規定している。固体ロケットのM-Vでは着火時の過渡応答を準静的加速度とは別に定義していた。

これらの条件には、ロケット側から衛星側に提示されたもの(注1)、および、その提示された条件に基づいた応答解析等から予測したものがある。一般的に、前者は衛星主構体、後者は衛星に搭載されるサブシステム・機器に対する条件である。いずれの場合も、打上げ時の最大予測荷重に対して、衛星側が自らの設計に用いる制限荷重および終極荷重を設定する。
衛星主構体の荷重については、通常、準静的加速度と低周波の動的加速度の複合加速度が支配条件となるが、部位によって、標定となるイベントが異なったり、他の機械環境や地上試験(正弦波振動試験等)が標定となる場合があるため、注意を要する。
搭載機器およびサブシステムについては、取付けインタフェース部で規定される振動(通常5~100Hzの正弦波振動、20~2000Hzのランダム振動、衝撃)が準静的加速度荷重より厳しくなり、設計支配条件となることがある。

打上げ時の荷重条件には、衛星側から提示された構造数学モデルを用いてロケット側が柔結合解析(Coupled Load Analysis;CLA)を実施した結果に基づいて規定される条件がある。対象となるモードが構造数学モデルに反映されていることが必須であるが、CLA結果に基づいて荷重条件を設定する際には、開発フェーズも考慮して適切なマージンを見込むこと。構造特性の変動が荷重条件に大きな影響を及ぼす恐れがないか注意を払い、要すればロケット側と協議(注2)すること。
また、デュアルロンチを想定している場合、衛星の搭載部位や相乗り衛星の特性によって環境が変わる場合があるため、早めにロケット側と協議すること。

(注1) 通常はインタフェース管理文書(制定前はユーザーズマニュアル)に基づく。
(注2) 打上げ形態を含めて衛星/ロケットの組み合わせに新規性がある場合、最初の柔結合解析は出来るだけ早く実施するのが望ましい。

(5) 軌道上
軌道上で衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器に作用する負荷(太陽電池パドルやアンテナ類の展開時、アポジ・モータあるいは2次推進系の作動時、ドッキング等による荷重、熱応力)についても考慮が必要である。

4.2.3.2 圧力
「宇宙用高圧ガス機器技術基準」の適用対象となるサブシステム・搭載機器については、同基準に基づいて最大予想使用圧力等の設計条件を設定すること。(注)

(注) 通常、以下の事項等を考慮して最大予想使用圧力を設定する。
・地上、打上げ時、軌道上における加圧プロファイル
・地上、打上げ時、軌道上における加速度、温度、外部圧力等の環境条件
・加圧システムの作動特性

4.2.3.3 組合せ荷重
衛星構体の部位ごとに 準静的荷重や振動荷重、熱荷重等の組合せを考慮すること。要すればサブシステム・搭載機器についても荷重の組合せを考慮すること。

4.2.3.4 制限荷重
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器の設計において適用される制限荷重は、通常、以下のようにして設定される。

(a) 打上げおよび軌道上での運用終了までに遭遇する最大予測荷重に基づいて制限荷重を設定する。準静的荷重の制限荷重としては、過渡応答および低周波振動応答を含めて平均+3σの確率値として規定されることが多い。さらに、製作、試験、輸送、組立、保管等の地上荷重を含めて制限荷重を設定する。試験時に他のフェーズ(打上げ時および軌道上など)の最大予測荷重を模擬する際に負荷される荷重については、制限荷重として設計条件に含める。

(b) 衛星主構体の荷重については通常、準静的加速度と低周波の動的加速度の複合加速度が支配条件となるが、二次構体については打上げ時ならびに正弦波振動試験時等の応答を考慮して設定する。サブシステム・搭載機器については、打上げ時ならびにシステム正弦波振動試験等での機器取付け部や機器内部の応答を予測して制限荷重を設定する。

(c) 衛星のプロジェクト固有の諸条件(衛星の開発方式、開発試験/検証試験での試験条件、複数の打上げ手段確保等)を考慮して、構体(主構体、二次構体)、サブシステムおよび搭載機器の設計に適用する制限荷重を定める。
この際、要すれば変動要因(衛星の設計・製造の成熟度等)を考慮し、個々に不確定係数を乗じた上で二次構体、サブシステムおよび搭載機器の設計に適用する制限荷重を定める。

4.2.4 アライメント
衛星構体に搭載されるサブシステム・機器でアライメントが要求されるものについては、名称とアライメント要求値(軌道上での変動分を含む)を規定すること。(注1~3)

(注1) 通常、以下のサブシステム・機器はアライメントが要求される。
姿勢制御系 :太陽センサ、地球センサ、ジャイロ、スタートラッカ、ホイール、地磁気センサ
推進系 :スラスタ、アポジキックエンジン
通信系 :アンテナ、光通信アンテナ
電源系 :パドル
ミッション系:光学センサ、電波センサ

(注2) アライメント要求は、主として以下の2点を考慮して設定する。
(1) 指向精度要求
(2) 姿勢制御系要求
前者(1)は各種通信系、ミッション光学センサ(望遠鏡)、電波センサ(アンテナ)との取付けインタフェースを含む。後者(2)は衛星構体とロケットとの取付けインタフェース、衛星構体と推進系との取付けインタフェース或いは各種姿勢センサとの取付けインタフェースを含む。

(注3) アライメントを阻害する要因としては、変動の時間に対応して以下に大別される。
(1) 定常変動(DCオフセット):
地上における組立/製造誤差および膨潤変形、打上げ時の荷重による変動、重力変動、軌道上での脱湿による変形等により発生する。
(2) 周期変動:
周回時の熱変形によって発生する短周期の変動の他、季節変動、ミッション初期/末期の変動による長周期の変動がある。
(3) 擾乱:
衛星に搭載している機器(パドル駆動機構、ホイール、回転機構を有する観測機器等)が発生する擾乱。

4.2.5 質量特性
衛星の質量特性(質量、重心位置、慣性モーメントおよび慣性乗積)は、主に以下の2種類の制約によって許容範囲が規定される。
(1) ロケットとのインタフェース条件
打上げ能力、結合部の許容荷重、衛星分離時の姿勢角レートによる制約等について考慮が必要である。
(2) 姿勢制御系とのインタフェース条件
軌道上での姿勢制御特性を満足するための制約、パドル展開、アンテナ展開および推進薬消費等による変化について考慮が必要である。

打上げ時および軌道上での質量特性が上記制約を満足するように衛星システムのコンフィギュレーション(搭載機器の配置含む)を決定し、衛星システム、サブシステム、搭載機器の質量特性をインタフェース管理文書等に規定すること。

4.2.6 擾乱
擾乱源からの微小振動に敏感なセンサ類、搭載機器については、擾乱による影響を評価すること。(注) なお、擾乱管理についてはJERG-2-152擾乱管理標準を参照のこと。

(注) 必要な場合はシステムレベルまたは機器・サブシステム単体の擾乱試験で擾乱による影響を検証する。

4.2.7 コンタミネーション管理
コンタミネーションの発生を極力防止するとともに、その影響を許容範囲に抑えること。(注1~3) なお、コンタミネーション管理についてはJMR-010コンタミネーション管理標準を参照のこと。

(注1) コンタミネーションには塵芥に代表される粒子的コンタミネーションとアウトガスに代表される分子的コンタミネーションがある。塵芥は地上環境下(組立や試験時)に堆積して衛星を汚染する。アウトガス(主に有機材料の蒸気または物質表面に付着している不純物のガス)は高真空下で固体表面から放出され、他の機器表面で凝集する。
これらのコンタミネーションは以下のような特性や性能の劣化を引き起こす。
・熱制御機器の熱光学特性(熱吸収率/輻射率)の変化
・光学機器の特性劣化
・太陽電池パネルの発生電力低下

(注2) 粒子的コンタミネーションを防ぐため、地上における製造、組立、試験においては、飛翔微粒子の堆積を防ぐため、必要に応じて保護カバーの装着、暴露時間の制限、使用設備の選択といった対策が採られる。地上環境の清浄度は、特に指定がない限り、ISO-14644-1クラス8(FED-STD-209Dクラス100000相当)以下とするのが一般的。

(注3) 分子的コンタミネーションを防ぐため、必要に応じて以下のような対策が採られる。
・金属表面には不純物の付着を残さないよう、脱脂洗浄などの清浄化作業を指定する。
・光学機器のように特に汚染を嫌う機器においては、独立した排気パスを設けるようにし、機器外部からのコンタミ(衛星バスからのアウトガス等)侵入に対して可能な範囲で隔離する。機器内部は、自らのアウトガスによる汚染を少なくするため機器の要求に対応したベーキングを行うよう指定する。
・アウトガスは温度の低い物体に付着するので、機器内部で特に汚染に敏感な光学機器は周囲と比較して温度が高くなるよう設計するのが一般的である。検出器等低温で使用するものでは、必要に応じて、デコンタミヒータ等を具備し、軌道上で昇温し付着物を除去する等の対策が採られる。

4.3 構造設計要求
衛星の構造設計における共通的な設計要求を以下にまとめる。

4.3.1 強度
以下の条件を満たすように衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器を設計すること。なお、降伏荷重および終極荷重は4.3.2.1項の安全係数を4.2.3.4項の制限荷重に乗じたものとする。

(1) 降伏荷重時
有害な弾性変形、有害な永久歪み(注1)を生じることなく、降伏荷重およびそれに複合した環境条件に同時に耐えること。ただし、温度、湿度等の複合した環境条件には安全係数を乗じない。(注2)

(2) 終極荷重時
破損または座屈を生じることなく、終極荷重およびそれに複合した環境条件に耐えること。ただし、温度、湿度等の複合した環境条件には安全係数を乗じない。(注2)
破壊モードの例を表4.3.1-1に示すが、構造に応じて必要な評価項目を選定すること。

表4.3.1-1  破壊モードの例
対象 破壊モード
金属部材 降伏、材料破壊(崩壊)
CFRP部材 材料破壊
圧縮部材 支柱、トラスの座屈、
曲げ圧縮梁の座屈、
円筒殻の座屈
曲げ部材 梁(ビーム)の曲げ破壊
剪断部材 パネルの剪断座屈、
結合金具の剪断破壊
ハニカムパネル パネルの剪断座屈、
パネルのリンクリング(wrinkling)、
表皮のセル間座屈、
コアの剪断破壊
締結部 インサート部の面外引抜き破壊、
インサート部の面内破壊(表皮破壊)、
すべり、
口開き
接着部 剪断破壊、
引張破壊

(3) フライト品の地上試験時
フライト品の地上試験(システム、サブシステムまたは機器単体試験)において、打上げ時および軌道上での制限荷重(最大予測荷重)以上の荷重を負荷する場合、有害な弾性変形、有害な永久歪み(注1)を生じることなく、試験時の最大荷重とそれに複合した環境条件に同時に耐えること。

(注1) 有害な永久歪みは金属材料の場合に適用する。ただし、ミッションに影響を与えない局所降伏(有害な永久変形、不安定性または疲労破壊を引き起こさない局所降伏)は許容する。一般的には0.2%以上の永久歪みを生じないことが推奨される。
(注2) 軌道上での熱応力が支配的な設計条件となっているものについては、軌道上での熱解析において適切な温度マージンを適用すること。

4.3.2 安全余裕

4.3.2.1 安全係数

降伏安全係数とは制限荷重に対する降伏荷重の比率であり、終極安全係数とは制限荷重に対する終極荷重の比率である。
準静的荷重条件(ここでは過渡または低周波応答を含めたもの)および正弦波振動条件に対する安全係数の標準値を表4.3.2.1-1に示す。ただし、「宇宙用高圧ガス機器技術基準」の適用対象となるサブシステムおよび搭載機器については、同基準の安全係数を適用すること。

各プロジェクトは表4.3.2.1-1を参照した上で、以下を考慮して衛星全体あるいは必要に応じて衛星の部位ごとに安全係数を設定すること。
・衛星プロジェクトの性格(ミッション達成上、優先されるべき要求)
・衛星の開発方式、検証計画および認定試験レベル
・ロケット側からの検証要求(または推奨)
・当該部位の異常(降伏、破損または崩壊)がミッションに与える影響、等
ただし、搭載機器およびサブシステムの安全係数は、構体(システム)より低くならないこと。
この安全係数は合理的に考慮されるべき材料および製造プロセスのばらつき、設計解析の不確定性、荷重条件の不確定性をカバーするものではない。材料および製造プロセスのばらつきは材料・部材強度の設定で、また、設計解析の不確定性は応力計算における適切な応力集中係数や特別係数の適用、応力解析における適切なモデル化と解析誤差に対する不確定係数の適用でカバーし、さらに、要すれば適切な安全余裕を確保する(あるいは適切な特別係数を適用する)ことによりカバーすること。荷重条件の不確定性が存在する場合、本来、荷重条件を設定する側がその不確定性を配慮して荷重条件を設定すべきである。しかしながら、その不確定性を安全係数に反映する必要がある場合は、その不確定の性格を十分吟味すること。

試験検証による設計保証および品質保証は本来必須ではあるが、試験実施が非現実的な場合があり得る。その場合は、適切な安全余裕を確保する(あるいは適切な特別係数を適用する)ことで試験を実施しない場合を許容するが、その可否や係数値については、過去の類似構造の有無や解析精度等を精査した上で、各プロジェクトで設定すること。

試験時に生じる荷重ついて、本来、この試験時以外での制限荷重や終極荷重を模擬するように試験条件は設定されるべきである。しかし、そのような模擬が困難である場合も多く、部位によっては試験時に発生する荷重が最大予測荷重となる場合があるため、各部位の最大予測荷重の設定にあたっては十分留意すること。
プロトフライトモデル(PFM)方式の開発の場合、構造体はプロトフライト試験(認定試験と試験レベルは同じ)に合格した後にフライトに供されるために、プロトフライト試験で発生する荷重に対してミッション喪失となる破壊や機能喪失が生じてはならないだけでなく、本来、制限荷重に対する要求条件である、ミッション達成に有害な劣化が生じてはならないことも必須となる。試験要求は各プロジェクトで規定すること。

表4.3.2.1-1  非圧力構造に対する安全係数(制限荷重への乗数)の標準値
対象フェーズ 安全係数   (注1)
降伏安全係数 終極安全係数
製造から軌道上運用終了まで
(下段のフェーズを除く)
PM/FM方式の場合 (注2) 1.1
(1.0以上) 1.25 
PFM方式の場合   (注3) 1.25 1.25~1.5 
地上における輸送、取扱い時 人に危害が及ぶ場合 1.5 2.0
人に危害が及ばない場合 1.25 1.5

(注1) 搭載機器およびサブシステムの安全係数は、構体(システム)より低くならないこと。
(注2) 降伏安全係数は1.1を推奨するが、開発上のリスクを考慮した上でJAXA衛星プロジェクトが必要と認める場合は1.0の適用を許容する。
(注3) 終極安全係数は1.5を推奨するが、衛星プロジェクトで個別に設定する場合でも1.25以上であること。ただし、1.25を超える終極安全係数に対しては解析上の安全余裕の確保は要求されるが、試験検証を要求するものではない。
PFM方式には以下の①および②のケースがあり、衛星プロジェクトで開発リスクを考慮して安全係数を設定すること。
①開発モデルとは別に、新規にPFMを製作する場合
②PFMのみを製作する場合
開発モデルを改修してフライトさせる場合(プロトフライト試験条件を適用)についても安全係数の標準値はPFM方式と同じとするが、衛星プロジェクトで開発リスクを考慮して設定すること。

4.3.2.2 安全余裕
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器は、4.2.2項および4.2.3項で定めた荷重と環境の組合せに対して、次の算式で定義された安全余裕(Margin of Safety:MS)が負とならないこと。降伏荷重および終極荷重は4.3.2.1項の安全係数を4.2.3.4項の制限荷重に乗じたものとする。構造部材の寸法は製造公差を考慮し、安全余裕が低くなる側の値を用いること。

主構体や金属材料を使用する部位については、原則として安全余裕の計算に用いる材料強度はMMPDSのA値またはそれに相当する値とすること。詳細は4.7項による。構造の座屈荷重は解析と試験の差、初期不整の効果および製品のばらつきを考慮したノックダウン・ファクタを適用すること。
必要な場合、衛星分離部など境界部の剛性を考慮した荷重分布または応力分布を用いて安全余裕を求めること。

4.3.2.3 特定構造部材の安全余裕
複合材料、接着構造など、破壊がカタストロフィックなもの、トラス部材のエンドフィッティング、継ぎ手およびインサートについては、表4.3.2.3-1に示す値以上の安全余裕を確保することを推奨する。
表4.3.2.3-1の安全余裕の最小値は代表的な例であり、材料、製造プロセス、製品間のばらつき(材料強度設定時に考慮されているばらつきではカバーされていない不確定要因)、強度解析に用いる構造数学モデルの精度等を考慮して個々に設定すること。
安全余裕の最小値を適用する代わりに特別係数を個別に規定してもよい。この場合、対象となる構造部材単体に適用される降伏荷重、終極荷重に特別係数を乗じること。なお、これは衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器の「降伏荷重」、「終極荷重」を全体的に引き上げることや試験要求を引き上げることは意味しない。

表4.3.2.3-1 特定構造部材の安全余裕 (代表的な例)
安全余裕の最小値 備考(特別係数で
規定する場合)
複合材料(CFRP)、
接着構造(サンドイッチ構造) 0.2 (破壊) 1.2  (破壊)
継ぎ手およびインサート
0.25(破壊) 1.25 (破壊)
トラス部材のエンドフィッティング
(接着強度、ピン強度、ラグ強度など) 0.25(降伏)
0.25(破壊) 1.25 (降伏)
1.25 (破壊)

 また、ボルト、リベット、ピンなどの構造的な重要さに比して軽量であるものはぎりぎりの設計としないこと。多数用いられるときは一箇所破損しても隣接箇所で耐えられる設計(フェイルセーフ設計)とするのが望ましい。

4.3.3 座屈

(1) 降伏荷重時
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器は、降伏荷重および複合した環境条件の下で、座屈により有害な変形を生じてはならない。

(2) 終極荷重時
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器は、終極荷重および複合した環境条件の下で座屈による破壊を生じてはならない。なお、座屈を緩和する荷重成分に対しては終極安全係数を乗じてはならない。

4.3.4 静的剛性

(1) 降伏荷重時
降伏荷重および複合した環境条件の下で有害な変形を生じないように衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器を設計すること。必要な場合、衛星分離部など境界部の剛性を考慮して設計すること。

(2) 終極荷重時
終極荷重および複合した環境の下で破壊に至る過大な変形を生じないように衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器を設計すること。必要な場合、衛星分離部など境界部の剛性を考慮して設計すること。
なお、プロトフライト方式の場合など、フライト品に終極荷重(認定レベルの荷重)を負荷する場合は有害な変形を生じないように設計すること。

4.3.5 動的剛性(固有振動数要求)

(1) システム
衛星の固有振動数は、重要な励起振動数(例えば、打上げロケットの固有振動数)との連成を避けるために、ロケット側から衛星に対して設定される固有振動数の要求を満たすこと。
固有振動数の条件は、通常、衛星分離部との結合面を完全に剛固定した状態で定義されるが、衛星の構造様式および衛星分離部との結合方式によっては衛星分離部込みで検討すべき場合がある。4.5.2項(4)を参照のうえ、ロケット側と調整すること。(注1)
剛性要求を満足できない場合、あるいは結合部剛性を考慮した剛性要求を満足できない場合は、柔結合解析によって衛星側の剛性のロケットへの適合性を確認すること。
また、衛星の推進薬タンク内の挙動(スロッシング)がロケットの制御システムと連成しないことを確認すること。(注2)

(注1) ストラットなどの影響により衛星構体下端の剛性分布が均一でない場合、多点結合方式(分離ナット結合方式など)の衛星分離部を必要とする場合などは、早めにロケット側と調整すること。
(注2) 参考: 衛星の推進薬タンク内の推進薬の挙動(スロッシング)がロケットならびに衛星の運動に影響を与えるため、通常、ロケット側にてスロッシング特性を反映した制御系の安定性確認が実施される。

(2) 搭載機器およびサブシステム
① 打上げ時コンフィギュレーション
搭載機器およびサブシステムの最小固有振動数が衛星との結合点を剛に固定した状態およびフリーフリーの状態で、衛星システムとの間で取り決められるインタフェース規定値(搭載機器は通常、120Hzとする場合が多い)以上であること。
ただし、この条件を満足できない搭載機器およびサブシステムについては、衛星に搭載した状態でシステム機械環境試験あるいは打上げ時に過大な応答が生じないことをシステム側で実施する解析や試験で確認した上でインタフェース規定に反映すること。

② 軌道上コンフィギュレーション
軌道上の運用コンフィギュレーションで柔軟構造特性を示すサブシステム(アンテナ反射鏡および太陽電池パドル等)や大型搭載機器については、姿勢制御系の動特性と干渉して過大な荷重を衛星に加えたり、姿勢制御系の性能を低下させる可能性がある。
これらの柔軟構造物の動特性については姿勢制御系と調整して悪影響を及ぼさないようにインタフェース規定を定めること。 
また、姿勢制御系を含めた擾乱源からの振動入力による柔軟構造物の励振がその機能に与える影響(アンテナ反射鏡の鏡面精度等)を評価し、許容範囲となるように設計すること。

4.3.6 圧力

4.3.6.1 高圧ガス機器
高圧ガス機器の設計については、JERG-0-001宇宙用高圧ガス機器技術基準によること。

4.3.6.2 ベンティング
地上試験(熱真空試験など)および打上げ時の衛星周囲の圧力変化によって主構体、サブシステムおよび搭載機器内部に過大な差圧が発生しないよう、ベンティングのための開口部を設けること。なお、光学機器のように特に汚染を嫌う機器については独立した排気パスを設け、機器外部からのコンタミ(衛星バスからのアウトガス等)侵入に対して可能な範囲で隔離すること。
ベンティングを行わない密閉構造や搭載機器は、高真空下での内部圧力に耐える構造とすること。
なお、開口部まわりのMLIの艤装についてはJERG-2-311 MLI 剥離防止設計標準を参照のこと。

(1) 搭載機器およびサブシステムのベントホール
閉構造に近い搭載機器およびサブシステムについては、打上げ時の周囲圧力変化によって破損しないよう、ベントホールを設けること。

電気機器の場合、ベントホール総面積と搭載機器内の空気体積の比(A/V)は1×10-5cm2/cm3以上、ベントホール1個当たりの直径は1.0~1.5mmを目安とする。搭載機器内部からの脱ガス、放電領域通過時の高電圧リークが問題となる場合は別に規定すること。

4.3.7 熱

(1)熱変形
必要な場合、軌道上および地上での熱試験において予測される衛星各部の温度分布(熱試験の場合、熱試験治具も検討対象に含める)に基づいて熱変形解析を行い、以下を確認すること。搭載機器およびサブシステムについても同様とする。
・熱応力が構造強度以内であること。熱サイクルによる疲労が問題とならないこと。
(高いインタフェース荷重が発生する場合などに実施。)
・熱変形下でアライメント要求を満足していること。
(光学センサや高指向精度アンテナなど、高い指向精度要求がある場合や、熱変形が姿勢変動に及ぼす影響が無視できない場合に実施。)

(2) 材料特性
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器の設計において、軌道上で予測される温度範囲での材料物性(降伏強度、引張強度、疲労等)の変化を考慮すること。材料の挙動が明らかでない場合、適切な試験で物性データを取得すること。

4.3.8 機械的結合部

4.3.8.1 構造部材間の結合ファスナーの選定
構造組立において構造部材間を結合する場合には、MIL規格のような公知の規格に基づいて製造され、強度が保証されており、かつ、材質が非磁性体であるファスナーを使用すること。
ネジのサイズに関しては特に規定を設けないが、可能な範囲で搭載機器取付け用ネジと共通化を図ること。
ファスナー1箇所当たりに作用する荷重は、初期締め付け張力を考慮して、使用するファスナーに対する許容荷重を超えないように設計すること。
作用する引張荷重に対して口開きしないように初期締め付け張力を設定すること。
せん断荷重に対してすべりを許容しない設計とし、引張荷重による締結部の摩擦力低下を考慮して初期締め付け張力の下限値を設定すること。

公知でない規格、または公知であっても強度規定が不明であるもの、あるいは磁性体であるファスナーの使用を希望する場合は、JAXA衛星プロジェクトと調整すること。

4.3.9 アライメント設計
アライメント要求のあるサブシステム・機器を搭載する場合は、衛星構体の設計において下記を考慮し、要求に対応した設計をしなければならない。(注1~2)

(1) 衛星構体はサブシステム・機器からのアライメント要求を満たすよう寸法公差、組立精度に配慮した設計とすること。
重力の影響も含む解析および検証方法を考慮したアライメント設計を実施すること。
(2) 衛星構体においては、アライメントクリティカル機器の取付部に対してヒステリシス、ゼロG効果、熱歪みおよび膨潤変形についてアライメント配分を行うこと。
(3) 要求精度が高いものについては、シム等によりアライメント調整が可能となる設計とすること。
推進系機器のアライメントについては、スラスタの取付け位置などを含め、必要に応じて衛星システムあるいは推進系からの要求を満足できるように調整代を設けること。
(4) アライメントミラー等により調整するサブシステム・機器については構体実装状態でプリズム等を使用し、光学的に調整できるような配置にすること。
(5) 微小な熱歪みにより影響を受ける光学センサ等を搭載するときは、熱歪みの小さい材料を用いる、 光学センサ構体と衛星構体の変形が互いに干渉しにくい支持方式とする、などの工夫をすること。

(注1) アライメントを阻害する要因としては、変動の時間に対応して以下に大別される。
(1) 定常変動(DCオフセット):
地上における組立/製造誤差および膨潤変形、打上げ時の荷重による変動、重力変動、軌道上での脱湿による変形等により発生する。
(2) 周期変動:
周回時の熱変形によって発生する短周期の変動の他、季節変動、ミッション初期/末期の変動による長周期の変動がある。
(3) 擾乱:
衛星に搭載している機器(パドル駆動機構、ホイール、回転機構を有する観測機器等)が発生する擾乱。

(注2) 光学センサの中には、構造設計で保証できないくらい要求精度が高いものが存在する。その場合には構造設計による保証限界を明確にすること。

4.3.10 寸法安定性
材料特性に起因するアライメントの変動がサブシステム・搭載機器の要求値以内となるように構体を設計すること。 アライメント要求が厳しい場合、サブシステム・搭載機器の設計においても同様の配慮をすること。

(1) 熱変形
熱解析結果の温度分布を構造数学モデルに入力して構体の熱変形を計算し、サブシステム・搭載機器のアライメント変動を把握し、要求値以内に抑えるように設計すること。(注1) なお、熱応力に対しては軌道上および地上の熱試験における構造強度が十分となるように配慮すること。
特に精度要求が厳しいサブシステム・搭載機器のアライメントに影響を与える構造部位については、熱膨張率の小さい材料を用いる、あるいは熱伝導率の高い材料を用いて温度勾配を抑える、等の対策を施すこと。

  (注1) 軌道上で衛星への太陽光入射角度が変動することにより、衛星構体内の温度分布が時系列で変化する。これにより構体が変形してサブシステム・搭載機器のアライメントに周回変動を与える。

(2) 膨潤変形
膨潤による変形を解析で確認し、必要ならばCFRPの樹脂を変える等、膨潤係数の小さい材料を用いること。(注2)

(注2) 地上での膨潤変形は軌道上での脱湿により寸法が変化し、DC成分的なアライメント変動を与える。

(3) 張力構造物のクリープ変形
材料のクリープ特性を把握し、変動が要求値以内であることを確認すること。

4.3.11 電磁適合性
衛星構体の設計において、導電性や電磁適合性(EMC)による要求事項を考慮に入れること。ミッション要求により構体に特別な電気的遮蔽効果が要求される場合は、構体設計において特に注意が必要である。また、磁場観測をするような特殊な衛星では、材料選定、工具の管理などに特段の注意を払うこと。サブシステムおよび搭載機器についても同様。

4.3.12 疲労
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器は、地上試験、打上げ時および軌道上での繰り返し荷重よる疲労で破壊しないように設計すること。 (注1~2)
なお、高圧ガス機器の設計に関してはJERG-0-001宇宙用高圧ガス機器技術基準によること。

疲労がクリティカルな場合、フライトする構体、サブシステムおよび搭載機器が地上試験、打上げ時および軌道上での運用終了までに累積される疲労に対して耐性を有することの評価(マイナー則を用いた累積疲労損傷の検討など)を行うこと。熱サイクルなどの軌道上において繰返し負荷が予想される荷重についても疲労破壊を前提にして耐性を評価すること。
疲労解析については5.11項による。なお、脆性材料を使用している場合、損傷許容性(4.3.13項)の確認を行うこと。

(注1) リレー等のように非常に固有値の高い機器においては衝撃の残留振動による繰り返し荷重によっても疲労破壊を生じることがある。軌道上では熱応力によっても疲労破壊を生じることがある。
(注2) ランダム振動は負荷時間中つねに共振モードが励起されているため疲労破壊には特に注意を要する。

4.3.13 損傷許容性
カタストロフィックな破壊を引き起こす部位(注)に脆性金属、ガラス、セラミックスなどの脆性材料を使用している場合、内在する初期欠陥(き裂)が引張応力の繰り返しによって進展しない、あるいは進展しても要求寿命(使用期間中に遭遇する負荷サイクル)内で破壊に至る大きさまで達しないよう注意を払い、必要な場合は試験または解析で評価すること。延性材料を使用している場合であっても、応力集中等により高い応力が負荷される場合は同様の確認を行うこと。
また、特に指定のない場合は、要求寿命の4倍の負荷サイクルまで耐えるよう設計すること。

なお、高圧ガス機器に関してはJERG-0-001宇宙用高圧ガス機器技術基準によること。

(注) 主構体やミッション機器の単一故障点など。

4.3.14 打撃損傷
カタストロフィックな破壊を引き起こす部位に複合材あるいは脆性材料を使用している場合、最終の非破壊検査(またはプルーフ試験)後に打撃等の損傷を与えないよう、特に注意を払うこと。
工具や部品等の落下などで打撃を与える可能性がある部位は、極力、緩衝材等で保護することが望ましい。必要な場合、最終の外観検査で検出しえない打撃損傷(欠陥サイズ)に対する損傷許容性(4.3.13項)を確認すること。

 なお、複合材圧力容器に対する損傷管理(損傷予防管理または損傷許容設計の適用)についてはJERG-0-001宇宙用高圧ガス機器技術基準によること。

4.3.15 軌道上環境による材料劣化
構体、サブシステムおよび搭載機器の設計において、必要な場合は軌道上環境(原子状酸素、太陽放射線、太陽紫外線、銀河宇宙線等)による材料の侵食、劣化を考慮すること。可能な限り実績のある材料を使用するか、適切な試験や軌道上実証で侵食、劣化の傾向を確認した材料を使用すること。必要な場合はコーティング等により材料を保護すること。(注1~2)

(注1) 原子状酸素は高分子材料(プラスチックや複合材のエポキシ樹脂など)を急速に侵食するが、通常、金属では問題とはならない。紫外線および電子(または陽子)と同時に原子状酸素に曝される場合、高分子材料の侵食を早める。
原子状酸素は地球まわりの低い高度で高密度であり、低軌道ミッションでは表面後退率を無視できる材料を選ぶか、寿命末期の厚さを設計上考慮しておく必要がある。なお、原子状酸素については進行方向前面側が問題となる。
また、侵食によって引き起こされるコンタミネーションについても考慮が必要である。

(注2) 複合材料構成要素のうち、有機繊維、有機マトリックスの中には各種宇宙線により劣化を起こすものがある。

4.3.16 コンタミネーション防止
コンタミネーションの発生を極力防止するため、衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器の設計において以下を考慮すること。

(1) 粒子的コンタミネーションの防止
粒子的コンタミネーションを発生させる材料を使用しないこと。
設計にあたっては、試験エリアや射場等において清掃が容易となるよう考慮し、可能な限り、粒子的コンタミネーションが落ち込む領域(清掃できない領域)がないようにすること。

(2) 分子的コンタミネーションの防止
衛星で使用される部品材料から発生するアウトガスは、分子的コンタミネーションの要因となる。このため設計段階においてアウトガスが少ないことが確認されている材料を優先的に使用し、新たな材料(特性が不明な材料)については使用可能かを試験で評価してから採用すること。(注1~2) CFRPの樹脂、接着剤、テープ、コネクタ、ケーブル被覆などの有機物を含む材料についてはアウトガスに特に注意して選定を行うこと。
特に指定がない限り、以下の条件を満足する材料を使用すること。
全質量損失(TML): 1.0%以下
再凝縮物質量比(CVCM): 0.1%以下

(注1) アウトガスの発生源としては以下のものがある。
・重合体ポッティング化合物   ・気泡
・エラストマー   ・フィルム   ・テープ
・インシュレーション   ・収縮チューブ   ・接着剤
・被覆   ・織物   ・束線材料   ・潤滑剤

(注2) アウトガスの測定では以下が実施される。
・全質量損失(TML)
・再凝縮物質量比(CVCM)
・再吸水量比(WVR)
材料の採用可否を判断するための評価基準はユーザに任されているが、歴史的なものとして、以下の評価基準が設けられている。
TML : 1.0%以下 (条件;24H、7×10-3Pa、125℃)
CVCM: 0.1%以下 (条件;25℃)
なお、この条件はコンタミネーションを発生させないことを保証するものではない。クリティカルな機器、センサ等への影響は個別に評価する必要がある。

4.3.17 メテオロイドおよびデブリに対する防護と発生防止

(1) 防護
低軌道衛星などでメテオロイド、デブリともに衝突の影響がクリティカルな場合には、シールドの装着、クリティカルな機器の搭載位置の工夫、冗長設計等の対策を行うこと。デブリについては衝突アジマス角およびエレベーション角の支配的方向が限定できる場合が多いので、必要に応じてクリティカルな機器を幾何学的に構体の陰に配置する、あるいはシールドの配置位置を工夫するなどの設計対処を図ること。

(2) デブリ発生防止
デブリの増加を抑制するために、衛星の設計に際しては、衛星の軌道投入から運用終了までの期間について、部品の放出または破砕によるデブリの発生を極小とする設計としなければならない。

4.3.18 腐食および応力腐食等
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器に使用する材料については、腐食性、応力腐食性、電食性、水素脆性、フレッティング腐食等を考慮し、耐性のある材料を選択すること。異種材料の組合せについても適合性のあるものを選択すること。特定の環境下における材料の挙動が明らかでない場合、適切な試験で劣化の傾向を確認すること。必要な場合、表面処理(メッキ、化学皮膜処理)、コーティング等により材料を保護すること。

4.3.19 整備性

4.3.19.1 互換性
同一の識別番号が与えられたアイテムは、機能的ならびに寸度的に交換可能なものであること。

4.3.19.2 整備性
検査、インテグレーション試験時や射場作業時の搭載機器や計装類の脱着や補修に対して、アクセスが容易な構造設計とすること。必要な場合は特殊工具およびハンドリング治具を準備すること。

4.3.19.3 脱着性
搭載機器(バス機器、ミッション機器)の取り外しと交換ができるような構造設計とすること。必要な場合は、サブシステム(またはモジュール)単位で取り外しと交換ができるように設計すること。射場での脱着が困難な機器は最小限とすること。
可能であれば二次構造も取り外しと交換ができることが望ましい。

4.4 衛星システム/搭載機器間のインタフェース
衛星システム/搭載機器間のインタフェースとして、4.1~4.3項、4.6~4.9項および5~6項に記載している事項以外に以下を規定すること。衛星システム/サブシステム間のインタフェースについても同様とする。

 (1)取付け要求事項
① 取付けネジの選定、配列
② 取付け穴の径および公差
③ 取付け方法
④ 締付けトルク
⑤ 取付け穴周りの塗り逃げ
⑥ コネクタの配置
⑦ Dサブコネクタ等の締付けトルク
⑧ ハーネス等の固定
⑨ コネクタキャップ
⑩ 火工品取付部
⑪ 機器取付面の面粗さおよび平面度
⑫ アライメント基準
(2) 機器のハンドリング
(3) 保護カバー
(4) 可動部を有する機器
(5) パージ
(6) ベントホール
(7) ノンフライトアイテムの管理
(8) 発生衝撃
(9) 構造数学モデルの作成

4.5 ロケットとの機械的インタフェース
衛星システムとロケットの機械的インタフェースとして、打上げ時の環境(4.2.2項)および荷重条件(4.2.3項)、質量特性(4.6項)以外に以下を規定すること。

4.5.1 衛星フェアリングとの機械的インタフェース事項
(1) 衛星フェアリングの衛星包絡域
衛星フェアリング内で衛星に許容される包絡域は、衛星とロケットとのインタフェ-ス管理文書に規定されており、一般に衛星側は、静的に衛星包絡域内に衛星を収納できるように設計をすること。そのため、衛星側はディメンション的にクリティカルなる部位の有無を検討し、クリティカル部位がある場合、試験時に測定し、包絡域を満足していることを確認すること。
また、ロケット側では衛星とフェアリングの相対変位(振動含む)を柔結合解析で評価して支障のないことを確認することとなっている。

(2) 防音ブランケット
防音ブランケットは、衛星への音響環境条件を緩和する目的で衛星フェアリング内部に装着される。衛星側は、音響環境条件を緩和する必要がある場合、ロケット側に防音ブランケットの装着を要求すること。

(3) 電波透過窓
衛星フェアリング内に衛星が収納された状態で直接外部との電波の送受信を行う必要がある場合、衛星フェアリングに電波透過窓を設けることをロケット側に要求すること。電波透過窓の位置については、ロケット側と調整すること。

(4) アクセスドア
フェアリング外部から衛星にアクセス(注)するために衛星で必要なアクセスドアの位置および個数を検討し、ロケット側と調整を行うこと。
衛星(システム、サブシステムおよび搭載機器)の設計においても、当該部位に対してフェアリング外部から容易にアクセスできるように配慮するとともに、アクセスドアの個数は必要最小限で済むように配慮すること。
推進薬等の緊急排出あるいは減圧のためのアクセスドアの位置については、フェアリング周辺での治具セッティングを含めて作業性を検討すること。

(注) 保護カバー、パージライン、試験ケーブル、治具配管等の取付け/取外し作業など。コネクタやパージポート近傍のアクセスドアだけでなく、パージライン、試験ケーブル、治具配管等の仮固定/取外しのため他の部位でのアクセスドアが必要な場合もある。なお、4.5.3項に記すとおり、アンビリカルコネクタは衛星底面に設けるのを基本とする。

(5) フェアリング空調
打上げ前の衛星の温湿度および清浄度環境を良好に維持するために、調和空気や窒素ガスにより空調される。衛星側は、搭載機器の温度条件等を考慮して空調条件(流量、圧力、温度、湿度、清浄度等)を定めてロケット側と調整すること。

(6) 内部アンテナおよび内/外部アンテナ
衛星フェアリング内に衛星が収納された状態で、外部との電波の送受信を行う場合、ロケットによっては衛星フェアリングに内部アンテナまたは内部/外部アンテナを設置することが可能である。設置位置については、ロケット側と調整すること。

4.5.2 衛星分離部との機械的インタフェース事項
(1)衛星分離部の選定
衛星質量、衛星重心高さ、衛星分離部許容荷重および衛星分離時スピンの有無等により衛星分離部を選定すること。

(2)衛星重心のオフセット
衛星重心の機軸直角方向へのオフセットは、衛星分離特性、衛星分離部とのインタフェース荷重等に影響を与える。 各打上げ機で許容値(注)が規定されているのでこれを満足するように衛星設計を行い、要すればロケット側と調整すること。
(注) 例:H-IIA 25mm以内(標準)

(3)分離面形状、剛性および表面処理
使用する衛星分離部で規定されているインタフェース部寸法と結合面の接地要求(あるいは表面処理要求)を満足するように衛星設計を行うこと。
マルマンバンド方式の衛星分離部の場合、衛星側フレームに要求される材質および剛性(適用長、断面積、慣性能率)を満足するように設計すること。
分離ナット方式の衛星分離部の場合、分離ナット締付用ボルト、ボルト首下座面、ボルトキャッチャ等の装着に関する要求を満足するように衛星側構体を設計すること。

(4)分離部剛性と分離面荷重
剛性解析などにおいて衛星分離面剛固定の条件を用いることが多いが、これは衛星を衛星分離部(PAF)に結合した状態で分離面が剛体的な変位をすると仮定できる場合の簡易手法である。実際には衛星構体の分離面でのローカルな変位が存在するので、以下のことに注意して設計すること。

① 衛星分離面剛固定と仮定した場合、本来衛星構体側で支えるべき内荷重をPAF側が支えるかたちとなり、衛星内荷重分布が正しく求められないことがある。すなわち、衛星分離面は有限の境界剛性(円環剛性など)を有しており、これを無視して衛星分離面剛固定と仮定した場合、衛星全体の剛性および強度を非安全側に見積もることがある。このような場合には、分離部の境界剛性を模擬した数学モデルを作成し、その部分をPAFまたは試験治具と結合した解析を実施すること。

② 種々の制約条件により衛星側境界剛性を確保できない場合には、以下の配慮が必要となる。
(a) 衛星システム振動試験時にPAFまたはPAFと剛性の異なる試験治具が用いられることがあるが、この場合にはPAFや試験治具の剛性を含む解析を行い、試験結果と比較して衛星数学モデルの評価を行うこと。
(b) 主構体静荷重試験の際にPAFを摸擬する治具は衛星の内荷重分布をできるだけ忠実に摸擬できるようフライト用PAFの剛性を模擬すること。それが困難である場合には、主構体各部に生じる荷重が試験すべき荷重を下回らないように治具設計または負荷荷重(油圧アクチュエータ等の負荷荷重装置による負荷荷重)の設定等において配慮するのが望ましい。試験データの評価においては、フライト用PAFと試験治具の剛性の違いを考慮すること。

③ 衛星の分離面近傍の構造様式やPAFのテーパー角等に依存して、衛星分離面に機軸方向荷重を伝達することに伴う半径方向荷重が生じる場合がある。その大きさや衛星とPAFとの間の分担比率はそれぞれの剛性比率に依存するため、必要に応じてロケット側と調整すること。

④ 分離方式によって以下の点を配慮すること。
(a) マルマンバンド方式のPAFを使用する場合、衛星側構造の剛性分布に起因する荷重集中(単位長さ当たりの荷重のピーク)のPAF側許容値を満足するように衛星設計を行うことを基本とし、これを満足できない場合はロケット側と調整すること。また、クランプバンドの締付力について要すればロケット側と調整すること。
(b) 多点結合方式(分離ナット方式など)のPAFを使用する場合、開発初期にPAF側構造モデルを衛星側構造モデルに組み込んで衛星側の設計を行うこと。衛星側構造の剛性分布に起因する荷重集中(各結合点のインタフェース荷重の上限)に関するPAF側制約を満足するように衛星設計を行うことを基本とし、これを満足できない場合はロケット側と調整すること。各結合点において生じる局所的なモーメントが採用した結合方式の許容値を逸脱していないことをチェックすること。また、各結合部の締付力について要すればロケット側と調整すること。

(5)分離スイッチ
分離検出または確認のため、通常、衛星側およびロケット側で分離スイッチを装着する。分離スイッチの位置および分離スイッチ用パッドの装着位置、寸法についてロケット側と調整すること。

(6)分離スプリング
分離スプリングを使用する衛星分離部の場合、分離スプリングの装着位置、寸度およびスプリング力についてロケット側と調整すること。衛星側フレーム以外で分離スプリングを受ける場合、受けパッドの装着位置、寸法についてロケット側と調整すること。

4.5.3 衛星アンビリカルコネクタ
衛星アンビリカルコネクタの位置は衛星底面に設けるのを基本とするが、側面に設けるときはロケット側と調整すること。側面に設ける必要がある場合、フェアリングとの適合性および射場等での作業性を考慮した位置に配置すること。
また、使用する衛星アンビリカルコネクタの選定および取付精度についてもロケット側と調整すること。


4.6 質量特性

(1) システム
打上げ時の質量特性は、衛星とロケットのインタフェース規定を満足すること。
また、軌道上での質量特性は各フェーズにおける変化(パドル展開、アンテナ展開、推進薬の減少等)を含めて姿勢制御系とのインタフェース規定を満足すること。

(2) 搭載機器およびサブシステム
搭載機器およびサブシステムの質量特性はシステムと機器のインタフェース規定を満足すること。

(a) 搭載機器およびサブシステムの重心位置は、直交3軸(1軸については、機器取付面の法線方向とする)方向について取付用基準穴からの距離(2方向)および搭載面からの高さで定義するものとし、インタフェース管理文書等に規定すること。また、重心位置に対する寸法公差は各方向とも±5 mm または外形寸法の±2%のうち、いずれか大きい方をインタフェース管理文書等に記載する。ただし、開発実績のあるものは製造公差を記載する。
質量は、公差を含めてインタフェース管理文書等に記載すること。数値は、10グラムまたは全質量の0.1%のいずれか大きい桁まで表示すること。ただし、開発実績のあるものは製造公差を記載すること。これを満足できない機器およびサブシステムは、JAXA衛星プロジェクトと調整の上、インタフェース管理文書等に記載すること。

(b) 搭載機器およびサブシステムの慣性能率および慣性乗積は、直交3軸方向について重心位置周りで定義するものとし、インタフェース管理文書等に記載すること。慣性能率に対する公差は±10% 、慣性乗積に対する公差は、特に要求が無い場合はN/Aとし、ノミナルの解析値とする。なお、慣性能率および慣性乗積の単位は kg・m2 とする。
慣性乗積の定義は、下記の通りである。
Pxy=-∑mi・xi・yi
Pyz=-∑mi・yi・zi
Pzx=-∑mi・zi・xi
なお、慣性乗積の必要な搭載機器は、JAXAが指定するものとする。


4.7 材料の選定
選定基準となるべき材料特性には以下のものがある。製造、地上試験、打上げ、運用までのすべてのフェーズで遭遇する荷重、熱的条件および耐環境性に適合する材料を選ぶ必要がある。

(1)物理的特性
材料の物理的特性には、密度、熱膨張係数、熱伝導率、比熱、太陽光吸収率/赤外放射率、放射線劣化特性、誘電率、膨潤係数等がある。
密度、熱膨張係数は構造の質量、剛性に関係し、熱伝導率、比熱、太陽光吸収率/赤外放射率は熱制御特性に関係する。放射線劣化特性は熱特性および剛性の経年変化に関係する。膨潤係数は複合材構造の寸法安定性に関係する。

(2)機械的特性
材料の機械的特性には、引張りおよび圧縮耐力、引張りおよび圧縮強さ、取付部等での面圧および剪断強さ、複合荷重下の強度、弾性係数、ポアソン比および伸び率等がある。
これらの特性値は、そのばらつき量を評価するに足る十分な試験データに基づいて規定されているものとする。

(3)破壊モード
破壊モードには以下のものがある。
(a) 疲労  (b) 脆性破壊  (c) 応力腐食割れ  (d) 水素脆性  (e) 遅れ破壊(注)
(f) 焼戻し脆性  (g) クリープ  (h) 一般腐食  (i) 電食
(j) 宇宙塵等による衝突損傷  (k) 放射線による損傷  (l) 原子状酸素による損傷

機械的特性の決定にあたっては、これらの各破壊モードに起因する劣化の傾向が適切な試験により確認されているものとする。

(注) 金属の水素脆性も遅れ破壊の一形態。この他、シリカガラス繊維、ケブラー繊維などの繊維材のストレスラプチャ現象(持続荷重を負荷しておくと、ある時間で破断する現象)もあるが、炭素繊維については実用上は問題とならない。

4.7.1 一般
材料強度およびその他の機械的、物理的な性質は、MMPDS「Metallic Materials Properties Development and Standardization」(注)、MIL-HDBK-17「Composite Materials Handbook」、「Aerospace Structural Metal Handbook」 および公的機関で認定された十分に信頼のおける文書・データベース等によること。信頼のおける公的文書によって特性値が得られない材料を使用するときは、材料特性試験を実施し、試験データを評価して用いること。

(注) MIL-HDBK-5 Metallic Materials and Elements for Aerospace Vehicle Structures の後継文書。使用実績のある材料についてはJAXA衛星プロジェクトの了解を得てMIL-HDBK-5を適用してもよい。

材料または構造部材の機械的特性データを取得する場合、テストピース(試験供試体)の材料加工には実機と同一の加工条件を適用するとともに、必要な範囲で構造部材の形態を模擬した供試体を製作すること。試験条件毎に複数個のテストピースを用意し、可能な範囲で実機の使用環境を模擬した試験で機械的特性を取得し、得られたデータから変動を考慮した材料特性(強度、剛性等)の許容値を設定して構造設計に使用すること。

材料試験について注意しなければならないのは、試験供試体と実物のコンフィギュレーションの違いにより、応力分布が異なる場合があることである。単なるクーポン試験片で強度値を判定する場合はこの相違に十分注意して、強度を決定しなければならない。

材料の機械的特性のうち、許容応力については以下の使い分けを原則とする。その他の値を使用する場合はJAXA衛星プロジェクトと協議すること。
(1) A値(または相当値)
一次構造において単一荷重パスを構成する構造部材で、破壊、破損することにより構造全体の健全性が損なわれる場合に適用する。
(2) B値(または相当値)
以下については、要求信頼度を考慮した上でB値を適用してもよい。
①冗長設計となっている構造部材で、破壊、破損しても荷重の再配分によって構造全体の健全性が損なわれない場合。
②適切な安全余裕を確保できる一次構造
(一定以上の安全余裕を確保する、または特別係数を適用することなどによる。)
③十分な安全余裕を確保できる二次構造ならびに搭載機器

金属材料の強度については、原則としてMMPDS「Metallic Materials Properties Development and Standardization」および「Aerospace Structural Metal Handbook」 に記載されているA値を用いることとする。

4.7.2 金属材料
材料強度およびその他の機械的、物理的な性質は、MMPDS 「Metallic Materials Properties Development and Standardization」および「Aerospace Structural Metal Handbook」によること。

上記公的データに記載の無い材料を使用する場合は材料特性試験を実施し、試験データを評価して用いること。 試験方法はASTM等の認定されている手法によるものとする。試験結果を統計的に整理し、A値あるいはB値相当の許容値を求める。

4.7.3 ガラスおよびセラミック
ガラスおよびセラミックの選択は、使用目的にあった十分な裏付け文書のある材料特性にもとづいて行うものとする。検討すべき重要な特性は破壊靭性、硬度、環境適合性、弾性、熱特性、電気特性、表面処理、不純物による表面の欠陥、脱ガスなどである。

これらの材料は脆性材料であり、傷などの表面クラックによる脆性破壊に特に注意する必要がある。

材料特性が入手できないときは、ASTM等の確立された試験法を用いてその特性を明確にしなければならない。残存確率を予測するために必要な亀裂成長、疲労に関するパラメータが明確になっている必要がある。ガラス・セラミック等の脆性材料のようにその強度がワイブル分布に従う場合は厳密にはA値、B値は決められず、プロジェクトによって定められた信頼度要求を満足する損傷確率以下となるように材料を選定する。信頼度要求の配分値が明確に定められていない場合は10-6以下とする。

4.7.4 複合材料
複合材料は金属材料に比較し、比強度、比剛性が大きい、熱膨張が小さい、等の特徴を有する。また、種々の繊維と樹脂の選択、および繊維の配向を行うことにより設計者が求める材料特性を作り出すことができる。
人工衛星における複合材料の使用において注意すべき特性は
(1) 脱ガス性
(2) 温度依存性
(3) 原子状酸素の影響
(4) 各種宇宙線(放射線、紫外線)の影響
がある。
また、 機械構造設計において注意すべき問題点は
(1) 層間強度
(2) 面内異方性
(3) 面外異方性
(4) 金属部品との結合
がある。
寸法安定性について考慮すべき特性は
(1) 熱膨張
(2) 膨潤変形
がある。
複合材料は基本的に設計によって強度が変化するので、その許容値はクーポン試験または実スケールの応力分布を良く模擬できる部材試験によって決める必要がある。
ただし、複合材料の場合は、材料試験サンプルをそのまま実物にあてはめることはできない場合が多い。複合材料の強度は実物の形状との関係が深く、サンプル試験による材料強度の厳密な決定は難しい場合もある。そのような場合、できるだけ実物を模擬した試験片で試験するか、あるいはクーポン試験ならば、相対的強度把握にとどめておくことが望ましい。

4.7.5 高分子材料
高分子材料は、断熱材、被服材、緩衝材、電気的シール材、絶縁材、あるいは電波透過性を利用してRF機器等、衛星の機器の材料として多く使用される。これらの材料の選択にあたって注意しなければならないこととしては、脱ガス、放射線劣化、各種宇宙線劣化、電食等がある。
構造材料として使用する場合は以下の特性に注意すること。すなわち、
(1) 静的強度はクリープ、応力緩和等の時間依存性を呈する。
(2) 疲労強度には負荷の周波数、吸湿が影響する。
(3) 剛性についても、応力と歪みの関係が非線形で負荷中に歪みが増大し、除荷後にも時間経過後に元の歪みに復帰する、いわゆる粘弾性を呈する。
(4) これらのすべての特性について温度が影響する。
強度の許容値はクーポン試験または実スケールの応力分布を良く模擬できる部材試験によって決める。上記の(1)~(4)に示した特性を考慮して、実使用環境を模擬する試験を実施しなければならない。
ただし、高分子材料は強度部材以外の用途で使われることが多い。

4.7.6 接着接合部の接着材料
接着剤の強度はクーポン試験または実スケールの応力分布を良く模擬できる部材試験によって許容値を決定する。(注)
動的あるいは繰り返し荷重による強度低下、あるいは複合した環境条件の影響を考慮すること。
クーポン試験による強度は、実際の製品の強度との差が出やすい。接着強度が試験片の形状および負荷の方法に依存するからである。できるだけ実物を模擬した試験片で試験するか、あるいはクーポン試験で実物を模擬できていないと判断される場合は、参考値として評価するにとどめておくことが望ましい。

接着強度は一般に、材料強度と比較して、ばらつきが大きい。接着の破壊には、界面破壊、凝集破壊、あるいはこれらの複合された破壊等、多様な破壊モードが存在し、その結果ばらつきが大きくなる。また、接着作業の条件(被着体表面の清浄化、接着作業時の環境、接着剤塗布方法等)に依存して強度が変化する。適切な作業条件を確立することと、その条件を安定して保持することが不可欠である。

(注) 接着部の強度は通常、端部の応力集中によって支配される。また、メーカーのカタログ記載の接着剤強度には以下のものがあるため注意が必要である。
・用いられた試験方法によって特定の試験片形状に対する応力集中の影響が含まれている場合(FED-SPC MMM-A-132等)
・応力集中の影響が無いようにした試験のデータ(同じ接着剤であっても上記より見かけ上、高い強度になる。)
従って、負荷荷重を接着面積で割って平均剪断応力を求め、接着剤のカタログ強度と比較するだけでは不十分な場合があり、クリティカルな接着部は材質、寸法形状を模擬した試験片による試験データによる評価、あるいは応力集中まで評価できる詳細な解析が必要である。


4.8 製造およびその他取扱い

4.8.1 製造プロセス
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器の製造(加工から組立終了まで)は標準かつ確立した(予め認定された)製造方法によるものとする。
製造時に得られたデータを含む製造作業の記録を残し、重要な品質特性および重要加工パラ メータについては過去の同一品のデータと比較し、妥当な値か確認すること。
複合材構造については同時に製造したプロセスコントロール試験片(クーポン試験片)により製品の製造プロセスが健全であることを確認すること。
熱処理、溶接、接着、表面処理、非破壊検査、化学的工程等の特殊工程については、作業方法、管理方法を含めた管理手順書を作成し、設備の検定、作業者の検定を行い、品質が維持されるよう管理すること。

4.8.2 取扱い、輸送、保管等
衛星の構造設計に際しては、衛星システム、構体、サブシステムおよび搭載機器の製造、取扱い、輸送、組立および保管時の環境を配慮し、それらが安全かつ容易にできるための手段を講じること。ただし、局所的なアタッチメントを除いては、地上におけるこれらの荷重が構造設計を支配するものであってはならない。必要な場合、輸送時の環境を計測して過大な負荷がかかっていないか確認すること。
地上における取扱い、輸送、保管時等において、パージによる湿気防止、汚染防止を必要とする機器およびサブシステムは、インタフェース管理文書等にパージの要求(窒素ガスの流量、パージ圧、窒素ガスのグレード等)を記載すること。
また、ハンドリング、組立作業、試験準備作業中等において、外部からの衝撃力の負荷等により破損する可能性がある場合には、保護カバーを準備する等、適切な処置をとること。フェアリング取付後に、保護カバーを取り外す場合は、フェアリング外部から容易に取り外すことができるように配慮すること。

4.8.2.1 包装
製品等の品質低下、腐食、損傷および汚染を防止するため、定められた手順に従って包装を行うこと。
輸送中および到着時などに製品等を保護するために特別な配慮や環境条件の維持が必要な場合は、その手順書または取扱説明書を用意し、必要な要求事項については包装の外側に表示すること。

4.8.2.2 梱包
必要な場合、防振機構の破損、輸送容器内の好ましくない動き、ならびに衝撃および振動により製品等の物理的損傷を防ぐために適当な緩衝、固定、補強、ボルト止め等を実施すること。梱包の適正を確認する必要がある場合は試験を行うこと。

4.8.2.3 保管
製品等を保管する場合、製品等に要求される環境の下で保管し、品質の低下または損傷を受けることがないようにすること。
有効寿命を有するものについては、定められた手順に従って定期点検等を含めた管理を行うこと。

4.8.3 清浄度
製造、検査、試験、保管、輸送等を含めた打上げ前の全フェーズに対し、清浄度要求を規定すること。

4.8.4 健康および安全への配慮
使用材料および製造プロセスは法律を遵守するとともに必要な処置を施して作業者の健康ならびに安全を確保すること。

4.9 品質保証

4.9.1 一般
衛星がそのミッションを達成するために必要な品質要求事項(機能、性能、質量等の要求事項)を満足していることを保証するため、品質保証プログラムを計画し、実施すること。参考となる標準としてJMR-005 品質保証プログラム標準がある。
以下、4.9.2項~4.9.4項については、JAXA衛星プロジェクトにより別途規定されている場合は、その規定による。

4.9.2 検査および試験
衛星の構体(主構体、二次構体)、サブシステムおよび搭載機器が図面および仕様書の要求事項に合致していることを実証するため、必要な検査および試験(プルーフ試験を含む)を計画し、実施すること。

4.9.2.1 検査技法
構造に関する検査方法は特に限定されたものはないが、クラック、内部欠陥、劣化および疲労等の検出については、必要に応じて最新の検査技法を適用すること。
非破壊検査は次に示す方法の中から検査目的に応じて適切なもの、あるいは適切な組合せを選択すること。
(1)打音検査(タッピング検査)
(2)浸透探傷検査(染色浸透探傷検査、蛍光浸透探傷検査)
(3)磁粉探傷検査
(4)渦電流探傷検査
(5)超音波探傷検査
(6)放射線透過検査(X線探傷検査等)
(7)アコースティック・エミッション
(8)その他(ホログラフィ、シアログラフィ、サーモグラフィ等)

4.9.2.2 検査および試験計画
材料調達から製品の納入(完成)に至る全段階に対し、適切な順序および時期に実施すべき検査および試験の計画を立案すること。

4.9.2.3 検査および試験の手順書
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器の検査および試験にあたっては、原則として手順書を作成すること。また、場所的に検出困難な欠陥、劣化および疲労の影響等の確認方法、もしくは検査方法についても指示書等の文書を作成すること。

4.9.2.4 検査および試験の記録
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器について、製造工程中に実施したものを含む全ての検査および試験について、記録を作成し、維持すること。記録には取得したデータを含めること。
検査および試験の記録は原則としてミッション終了まで維持すること。

4.9.3 識別およびトレーサビリティ

4.9.3.1 表示項目
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器については、識別のため、以下の項目を英文または英文略語で表示すること。必要な場合はインタフェース管理文書等に表示内容を規定すること。
(1) 品名
(2) 部品番号または型番号
(3) 一連番号または製造番号
(4) 製造者名またはその識別
(5) 製造年月
(6) 発注者名
表示スペースの制限等から全項目を表示しない場合は、少なくとも部品番号または型番号(上記項目(2))および一連番号または製造番号(上記項目(3))を表示すること。 なお、ロットでの管理が必要な場合、ロット番号を表示すること。

4.9.3.2 識別表示法
搭載機器への表示法は、ゴム捺印、ステンシルまたは同等の方法とし、取扱い、試験中に遭遇するブラッシングおよび環境条件によって消滅しないようにすること。
識別表示は、搭載機器の外表面に施すこと。

4.9.3.3 一連番号
識別を容易にするために、すべての搭載機器およびサブシステムには固有の番号を割り当てなければならない。また、この番号は連続する必要はないが、一旦割り当てた番号は同一部品番号を有する他の品目に移したり再使用してはならない。

4.9.3.4 トレーサビリティ
衛星の構体、サブシステムおよび搭載機器の品質記録(製造、検査、試験等の記録を含む)には部品番号(または型番号)、一連番号(または製造番号)等の識別を示し、以下がわかるトレーサビリティを備えていなければならない。
(1) 製造に使用した部品または材料がわかるトレーサビリティ。
(材料の熱処理ロットあるいは複合材製造のキュア・ロットなどがわかること。)
(2) 同一工程または組立品中の同種の部品または材料の使用箇所がわかるトレーサビリティ
(3) 加工から打上げ前までに実施された検査、試験等で受けた荷重などの負荷履歴。

4.9.4 納入
納入すべき製品および提出すべき文書類については、予め調達仕様書等により定めておくこと。

 

 

 

1.2 テーラリング
本文書を適用する場合、個々の衛星に対する要求事項(ミッション要求、機能・性能要求、運用条件、コスト要求、開発方式、国際共同ミッション由来の要求等)との適合性・優先度を考慮して本文書の規定に対する適用/非適用を明らかし、適切な内容にテーラリングした上で個別の仕様書等に規定すること。

投稿されたコメントの一覧

CRの一覧

メールによる直接の質問、意見用












fotter